Pricing (Prof. Anderson)

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利益を上げるための最も簡単な手段の一つは価格を上げることである。しかし、価格を上げ過ぎれば、顧客は商品を買わなくなり、かえって利益は落ちてしまう。むしろ少し価格を下げた方がたくさん商品が売れ、利益が上がる可能性もある。利益最大化のための価格設定というのは非常に難しい。

価格を設定する方法には色々ある。一番簡単な方法はコストに30%のマージンを乗せようという形で、売り手側のガッツフィーリングでマージン率を決めてしまう方法である。顧客側の視点を全く考慮していないという点でこのアプローチは理想とは程遠い。他にも競合の価格を参考に、それより少しだけ安い価格設定をする方法もある。これは過剰な価格競争を招きかねないし、そもそも競合が合理的な価格設定をしている保証はどこにもない。もう少し科学的な手法を使いたいなら、ミクロ経済学の需要と供給のカーブを作って、均衡価格を調べる方法もある。しかし、そもそもこの需要と供給のカーブを作ることは並大抵の作業ではない。少しリサーチすれば手に入るような代物でない。

このように本来は一筋縄ではいかないPricingなのだが、Kelloggには簡単かつ実用的な価格の設定のアプローチを学べる授業がある。それがEric T. Anderson教授の”Sales Promotion & Retailer Behavior”である。まず、この教授だが、いわゆる理系オタクである。Northwestern大学、Stanford大学でEngineeringを学び、MITでMarketingのPhDをとっている。授業でも常にScientificなアプローチをこよなく愛し、議論の進め方は非常にロジカルだ。いわゆる、Marketingの教授にありがちなEntertainerではなく、彼の授業には実用的なコンテンツがたっぷり詰まっている。

彼の教えるPricingのアプローチはシンプルで、過去のデータを使って価格と売上個数の間で回帰分析を行うというものである。どの企業でも、それぞれの価格でどの程度の量の商品が売れたかのデータくらいはとってあるはずである。そのデータさえあれば分析は可能で、この回帰分析を基に、この価格に設定すればこれくらいの量が売れるというシミュレーションを行うことができる。あとは複数のシミュレーションを基に、どの価格が一番利益を最大化するかを調べ、価格を決定するのだ。

もちろん、売上個数に影響を及ぼす変数は自社の価格だけではない。自社のプロモーション活動、季節変動要因、競合の価格、競合のプロモーション等上げ出せばきりがない。彼の授業では、こういった要素も、どう回帰分析に盛り込めばいいかを学ぶことができる。世の中の全ての変数を組み込むことは不可能だが、どの変数が重要そうかはある程度予測がつくし、回帰分析では、実際にその変数が重要かも判断ができる。特に競合の価格が自社の売上個数にどの程度の影響を与えるかを定量的に分析できるというのは、自分には非常に面白かった。全ての変数の効果を、何となくではなく、数字として見ることができるのが、この授業の最大の魅力である。

彼の授業で扱うのは、もちろんこの回帰分析だけではない。リテーラーとの間の効果的なトレードプロモーションや、やってはいけない値引き、価格を9で終わらせることのメリット・デメリット等、Pricingに不可欠な知識を山のように教えてくれる。彼はこの分野の権威であり、彼の様々な研究成果も授業中に取り上げられる。その中には、どうやってこんなデータ集めたんだとか、これはオタクじゃなきゃできんというものまであり、どれも目から鱗である。

彼が授業中によく言うセリフで好きなものが二つある。

“I am sure 99% of you will not run this regression analysis by yourself after graduating from Kellogg.  However, I am sure, as a corporate executive, you will have to make a decision based on the pricing analysis your people run.  Without understanding how your people analyze the data, you cannot make a right decision.”

将来、企業のsenior managementとして、ビジネスの判断をする際に、自分の部下がやった分析の意味がわからないようでは困る、だからこそ、ビジネススクールにいる間にちゃんと勉強しておけということである。確かにPricingの回帰分析はコンセプト自体はシンプルだが、一度自分で手を動かしておかないと、理解は難しい。データの読み方等にも色々とコツがある。将来恥をかかないためにも、一度自分の手を汚しておくことは必要だ。

“This regression analysis will just give you simulation according to your instructions.  It is not a tool to give you a right answer.  You have to judge which factors to include in the analysis and which scenarios to use.  Do not get into too much number crunching and always step back to have a big picture.”

要はこのPricingの回帰分析はツールに過ぎず、正しい答えを出せるかは使い手次第ということである。また、世の中の無数の変数を加味しようとすれば、ただ分析にはまってしまう。分析には、正しいビジネス判断を下せるだけの確かさがあればいいのである。

この授業はKelloggに入ってから、最もハードスキルが鍛えられた授業であったと思う。日本の企業で、Pricingに関して、ここまでscientificなアプローチをとっているところはどの程度あるのだろうか。ビジネススクールでは、Leadership等のソフトスキル面の授業の面白さに目が向いてしまいがちだが、こういったtangibleにスキルが学べる授業もしっかり取るべきだと思う。

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このページは、HOが2010年12月19日 18:59に書いたブログ記事です。

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