ケロッグには、学生の目的やニーズに対応してフルタイム 2年制 MBA、フルタイム1年制MBA、エグゼキュティブMBA、パートタイム MBA など、多様なプログラムが用意されています。また、MBA ともう1つの学位を同時に取得できる、JD -MBA (法学部とのジョイント)、MMM (工学部とのジョイント)などのデュアル学位プログラムもあります。しかし、これらのデュアル学位プログラムは日本人の参加者の絶対数が少ないこともあり情報量が乏しく、あまり詳しくご存知でない人が多いのではないでしょうか。今回は、この謎のデュアル学位プログラムの中で MMM にスポットライトを当て、今年卒業した筆者より、自分自身の体験も交えて概要を説明したいと思います。

ビジネスとエンジニアリングの融合
アップルのような魅力的な商品の発想はどこから来るのか?マーケティングやファイナンス、戦略などのツールは不可欠ですがそれだけでは限界があり、工学系マネジメントが商品差別化のための大きな力を秘めています。MMM (Master of Manufacturing and Management ) は、商品・サービスなどの消費財ビジネスにおけるイノベーション・デザイン・開発・製造等の技術サイドのマネジメント能力を備えた人材の育成を目的とし、2年間で MBA (経営学修士) とMEM (Master of Engineering Management: 工学修士) の 2 つの修士学位を取得するフルタイム・プログラムです。通常の MBA と全く同じ期間・学費で学位を二つもらえるので、お得感もありますね。
デザインとオペレーションにフォーカスしたカリキュラム
ハイテクなどの業界の移り変わりの激しさに対応し、MMM プログラムの中身も常に進化をしています。MMM 発足以来、トヨタの効率的生産システムなどの「オペレーション」がカリキュラムの中心に据えられてきましたが、最近は何よりも「デザイン」に大きく軸足を移しつつあります。
このデザインは、必ずしも芸術的なデザインを指すのではありません。むしろ、人間観察などから得られる洞察を元に商品・サービスやビジネスで本当に必要とされていることを見極め、それに対する解を創造するプロセスのことを指します。デザインのコア科目「The Design of Services and Products」は、「誰のためのデザイン? (http://www.amazon.co.jp/dp/478850362X/)」などの著書で知られるデザイン界の重鎮であり、MMM の Director であるドン・ノーマン教授が担当しています。またケロッグでは、デザイン業界で高く評価されている IDEO 社の看板デザイナー、トム・ケリー氏に対し、今年 Distinguished Leadership 賞を授与しました。これはケロッグのデザインへのコミットメントの強さを示しており、MBA とデザインの融合に興味がある人には MMM は随一のプログラムであり、ピッタリはまると思います。
実地体験型の科目としては、「Integration Project」が用意されています。これはMMM全体で習ったスキルを総動員する集大成的なプロジェクトで、ハイテク・製造業などの会社が抱えるリアルな課題の解決に当たります。また、これらをバランスよく使いこなすゼネラルマネージャになるべくリーダーシップを養成する、ホワイト教授の「New General Manager」も看板科目の一つです。
いわゆる MOT (Management of Technology) が大きな組織全体の技術戦略・マネジメントを主に扱うのに対し、MMM の内容はより工学的であり、現場のエンジニアの目線に近いマネジメントのように思います。逆に MOT 的な技術マネジメントは、ケロッグでは Technology Industry Management Program という専攻プログラムで提供されており、通常の MBA学生も MMM 学生も受講できます。ただし、このような分類はかなり大雑把なものであり、これらのプログラムの境界は実際にはかなり曖昧だったりするので、それぞれのプログラムの中の具体的な科目内容を詳しく見て、自分のニーズに照らし合わせる必要があると思います。
エンジニア経験者を中心とした小規模なクラス構成
ケロッグはテクノロジー系 MBA 校としてはそれ程有名ではないかもしれませんが、実際に参加している学生は非常に優秀です。私は、在学中にワイヤレス業界を題材としたビジネスケースコンペに MMM で固めたチームで出場する機会があったのですが、他のトップ MBA 校を破り見事優勝することができました。 この時の勝因は MMM 学生ならではのハイテク業界への深い洞察、切れのあるディベート力、ケロッグならではのチームワークだったと思います。
• クラスサイズは小規模で、アットホームな雰囲気もあります。(2008年入学の学生数は 約 60 名)
• インターナショナル学生率は 28% (2008年入学)で、以下の通り日本人はとても少ないです。
| 入学年度 | 日本人学生数 |
|
2004 |
1 |
| 2005 | 0 |
| 2006 | 0 |
| 2007 | 3 |
| 2008 | 1 |
• 出身学部は工学部が多いですが、文系でエンジニア経験の全くない人もいます。
| 出身 | 割合 |
| 工学部 | 65% |
| 経営学部 | 15% |
| 理学部 | 13% |
| 経済学部・数学部 | 7% |
• 女性の比率は 15% と少なく、女性志願者は比較的歓迎されるのではないかと思われます。
プラスアルファの課外活動・コミュニティ・サポート
通常 MBA での課外活動に加え、MMM ならではの活動として、以下のようなイベントに参加したり、サポートを受けることができます。
• カンファレンス
MMM はケロッグで年に1度開催される終日イベント Manufacturing Business Conference を主催しており、各種セミナー・パネルディスカッション・交流会などがあります。2009年は長期的成功 (Sustainability) をテーマに、1865年に設立された穀物メジャーのカーギル社の VP などが基調講演をしました。(カンファレンス自体は、ケロッグ生なら誰でも参加可能。)
• セミナー
不定期に業界・大学から外部スピーカーなどが招かれ、MMM のテーマに即したセミナーが開催されます。
• 工場見学
今の時代のアメリカの製造業の現場が一体どうなっているのか、自分の目で実際に確かめることができます。私の代では、老舗アメリカン・バイクのハーレーダビットソン社のエンジン工場を見学しました。
• 就職サポート
ケロッグのキャリアマネジメントサービスに加え、MMMオフィス経由でしばしばインターン・フルタイムのOpportunity が紹介されます。米国での就職を希望している人には、少しでも多くのチャンスに出会えることになりますね。
• 社交イベント
毎週木曜の夜に、近場のバーにて「Thirsty Thursday」という飲み会があります。また、各種お楽しみイベントが随時あります。参加は自由ですが、こうしたオフラインの付き合いを 2年間続ければ、クラスメイトとの関係を本当に濃くすることができますね。
MMM の卒業後の進路
コンサルティングに進む率は、通常 MBA よりも多いようですね。金融系に進む例もそれなりにあります。(ただし、現在は経済状況が悪いため、、、何とも言えませんね。)

MMM のメリット・デメリット
上述の内容との重複もありますが、私が考える MMM のメリット・デメリットを以下に纏めました。
メリット
1. MBA にプラスアルファの「引き出し」を加える。
製品やサービスの、user experience を主眼にしたデザインアプローチを学べる 「デザイン」と、モノづくりの効率を追求する「オペレーション」を、その世界のプロ達から学べます。
2. 親密な友人がいるセクションが 2つできる。
MBAとMEM(MMM)ではやはり人の文化・傾向が少し違うので、両方を体験できます。私の場合、MBAの友人とグループを組むとそのdiversityから、ちょっとした実社会的感覚に浸れ、MMMのメンツとグループを組むとホッとします。:-)
3. 実地訓練
2年生になるとハーレーダビットソンやアボットなど、モノ作りの世界企業からの依頼を受けてのコンサルティング・プロジェクト「Integration Project」 を正規の単位として行えます。
4. なんと言ってもデュアル学位。
揺るぎないモノ作り/サービス提供といった実業の世界でのキャリアを追求するなら、MBA+MEMでしょう。コンサル志望などであっても、製造業やデザインアプローチを理解していることが就職上の強みになったケースがいくつもあります。
5. リソースもダブルで活用できる。
施設、就職活動、アカデミックな学び、コネのリソースとして、MBA と MEMのもの両方を贅沢に使えます。
6. 有利なビザ条件
これは、私費留学から米国での就職を希望する人は注目です。ケロッグの MBA 卒業後、日本人などのインターナショナル学生は OPT (Optimal Practical Training) という制度を利用して最長 1年間米国で仕事をする権利が得られますが、MMM の場合は技術系修士が考慮され、最長17ヶ月という長い間の OPT 期間が得られます。
デメリット
1. 授業が忙しい
最終的な必須単位数は 通常の2年制MBA も MMM も同じなのですが、MBAのほかにMEMの修了要件も満たす必要があるのがトリッキーです。この結果、MBAでは1クォーターに4科目履修するのが標準的であるのに対し、MMM では5科目になってしまう可能性があります。Waiveすべき科目は積極的にwaiveしないと、希望するメジャーを取得できない可能性があります。
2. 課外活動も忙しい
MMM独自の課外イベントもあるので、少々忙しくなりがちです。(当然、個人の裁量で取捨選択可です。)
3. スケジュールの重複
どうしても取りたい MBA と MEM の科目が時間的に重なってしまい、どちらかを諦めざるを得ないことがあります。私の場合、MMM の「Innovation Frontier」という人気科目を是非取りたかったのですが、他の MBA 側のスケジュールの関係で仕方なく諦めてしまいました。もし MMM に参加する場合は、特に年間の授業履修の計画を綿密に立てることをお勧めします。
ただし、「MMM に参加することにより、MBA 側で体験できることが半分になってしてしまうのか?」または「 通常の MBAの人達から置いてけぼりにされるのか?」かというと、そうではありません。MBA 側と MEM 側で必須とされる科目が重複していることもあり、私の場合、授業・クラブ活動などの全体の 80-90% の時間は MBA 側に費やしていました。1クォータにつき、平均して4つの MBA 科目を取り、純粋に MEM で開講されている科目を一つ加えて合計 5 つの科目を取るというのが典型的な構成だったと思います。また、通常の MBA 学生との交流も、全く垣根なく行われています。通常の MBA で得られる知見やネットワークに、MEM で「もう一つの引き出し・チャンネル」を加えるという感じですね。
MMM 受験のコツ
• 出願者は少ないが、日本人は期待されている。
MMM の日本での認知がまだまだ発展途上中のためか、ケロッグのキャンパスを訪問する受験者の方を見ている限りでは、MMM への日本人出願者の数は少ないのではないかと感じます。その一方で日本のハイテク・製造業は今も世界で一目置かれており、日本人が学校で Contribute できる余地が多く学校側からのニーズは高いのではないかと個人的に思います。
• プロセスは通常のMBA とほぼ同じ。
MMM の合格難易度は通常の2年制 MBA と同様にシビアです。参考値としては、2008 年入学者の GMAT の平均点は 710 でした。MMM はエンジニアリングに比重を置いたプログラムなので、Math の点数を上げておいた方がいいかもしれませんね。受験プロセスも基本的には似たものですが、詳細はケロッグの公式のアドミッション情報をご確認ください。
• とにかく、関係者と話しましょう。
MMM のプログラム構成は時代に合わせ年々改訂されているので、最新情報を学生・直近の卒業生やアドミッションなどから直接話を聞くのが手っ取り早いです。出願プログラムに迷っている人はMMM が自分のゴールを達成するために最適な選択なのかをチェックしたり、出願するのに決めている人はよりよい出願パッケージにできるかもしれません。
以上、少しでも MMM の理解に役立てば幸いです。質問があれば、下記のアドレスに気軽にお問い合わせくださいね!
MMM 関連のリソース
• MMM 公式サイト: http://mmm.northwestern.edu
• ケロッグプログラム紹介ページ内: http://www.kellogg.northwestern.edu/Programs/FullTimeMBA/MBA_Programs/MMM_Program.aspx
MMM の日本人在校生・卒業生問い合わせ先
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