今回は、Strategyのクラスを履修するなかで、私なりに感じ、理解した視点について書きたいと思う。今までこの分野に触れたことがなく、今後学んでゆこうという方に参考にしていただければと思う。Strategyというと、何か格好がよさそうな教科であり、MBA受験生の中でも何となくStrategyを学びたいと言う人が多い。一方で、Strategyは、MarketingやOperationなどと比べても新しい学問であり、後者に比べると必ずしも学者間で体系化が進んでいないという事実はしっかりと認識されていない。このブログでは、Strategyという学問の一般的な解説と、ケロッグにおける主要なStrategyのクラスの紹介をしたいと思う。なお、このブログは以前執筆したブログを修正、加筆したものである。
私自身、当初Strategyという学問自体に期待があった一方、実際にStrategyの基礎の授業を受けた時点では、実はしっくり来ない部分がでてきた。というのは、様々な理論(「各論」)を一つの体系として整理される努力が、このStrategyの学問の世界ではあまり進んでいないという印象を受けることがあったのだ。このように思うのは私だけではないようで、Strategyの世界ではまさに「そもそも”Strategy”とは何なのか」ということが議論されている。
“After more than 30 years of hard thinking about strategy, consultants and scholars have provided executives with an abundance of frameworks for analyzing strategic situations.”
“Missing, however, has been any guidance as to what the product of these tools should be – or what actually constitutes a strategy. “(Hambrick and Fredrickson 2001)

Strategyの流れ
この問題を理解するために、Strategyの歴史について触れたい。Strategyの歴史はMarketingやFinanceなどの他のビジネス学問分野と比べても浅く、1980年代から脚光を浴びたMichael Porterの理論に始まったといってもよいようだ。それ以前は、どちらかというとFinanceの視点からの、予算策定やキャッシュフロー管理がStrategyの主な分析対象だった。例えば1970年代に開発されたBCG Matrixは、当時流行していた多角化経営のための財務管理の手法として活用された。そのためもあってか、事業シナジーの視点や、他社が真似できないCompetitive Advantageを築くことの可能性といった視点は抜け落ちている。
さて、1980年代のMichael Porterは、Strategyを競争の文脈において捉えた。このため、彼はCompetitive Strategy(競争Strategy)という言葉を好んで用いる。そこで生まれたのが、Five Forceという業界分析の手法だ。また、PorterはStrategyの本質を「ポジショニング」として捉えた。おそらく、競争環境においては、何でもやるということではなく、何をやって何をやらないというトレードオフの思考が必要だからということであろう。彼と彼に続くポジショニング派は、(1)「事業をめぐる環境の中で事業がどう位置づけられているか」、その中で (2)「事業がどのようなStrategyポジションをとるか」、という2点が事業の業績を左右すると考える。
だが、Porterの理論に対しては、今日までに様々な批判がある。特に、Strategyが既存の業界構造を前提とした静的な分析にとどまってしまい、ダイナミックな価値創造のための思考につながりにくいということが言われている。また、Five Forceは、SupplierやBuyerとの敵対的関係を想定しており、Win-Win思考につながりにくい。

そこで、ポジショニング派に対して、1990年代に台頭してきたのが資源ベース派である。資源ベース派は、組織がどのような資源や能力をもつのか、それがどう組織内で活用されているのかが競争優位性の基盤であり、事業の業績に大きく影響するという見解を持つ。例に挙げられるのが、ホンダのエンジンである。ホンダはエンジンのコア技術の強みを生かして、自動二輪、自動車、その他の事業(例えば芝刈り機)まで幅広く事業を開発し、成功を収めてきた。一方で、資源ベース派に対する批判も挙げられる。例えば、競争優位がある企業であれ、競争が激しすぎる環境においては利益を生み出すことは難しいだろう。
その後も様々な理論が登場している。ケロッグのEdward Zajac教授は、上記の二つの考え方も踏まえたうえで、現在の市場環境においては、よりWin-Win思考、顧客重視のStrategyの視点が非常に重要になってくるだろうと言う。ただ、これらの異なる視点からの理論を繋げた体系化は、十分にはなされていない。この点はStrategyを学ぶ上でやきもきする点だが、一つの理論だけをやみくもに信じるのではなく、複数の視点から分析するのが肝要であろう。

Strategyとミクロ経済学
多くのStrategyの理論は、ミクロ経済学者によって経済分析の裏付けとともに発展してきた。Michael Porterもミクロ経済学者である。ケロッグにおいても、多くのStrategyの教授陣はミクロ経済学者だ。
”Economic Logic”(どうやって利益を増やすのか?)がStrategyの中心に据えられることは自然なことのように思える。MarketingやOperationにおいても、経済性を考えるが、それらは基本的にはPL(損益計算書)へのインパクトを直接計算するというシンプルな方法によってなされる。一方、Strategyでは、1)業界構造、2)企業の行動、3)競合企業の反応という3つの動きを捉えたミクロ経済分析を行う。ケロッグのStrategyのクラスにおいては、週の前半に講義を通じてフレームワークを学び、後半にケースディスカッションを行うというパターンが多い。「経営はサイエンスではない」という前提のもと、多様な実例の中で学んでゆくという考え方もあるが、実際には経営にはアートとサイエンスの両側面で考えられる力が重要だと思う。
なお、Strategyも純粋な業界分析やStrategyのデザインを超えて、StrategyのImplementation、特に組織と人のマネジメントの領域に入ってくると、よりBehavior論(行動学、心理学)を重視せざるを得なくなってくる。ケロッグは、MORS (Management & Organization)のプログラムにおいて、この点をカバーしている。
(続く)
AT

コメントする