私たち二年生にとっては、ケロッグでの最後の学期。
ここに来ておもむろに授業やいろんなクラブが開催する講演に一生懸命出席する人、卒業後の仕事や起業に向けて準備に余念がない人、家族との時間を最大限持とうとする人、ネットワーキングという名目のもとパーティーをはしごする人、とにかくゴルフ三昧の毎日の人と、ケロッグらしくみんな人それぞれですが、残り少なくなったここでの貴重な時間を悔いなく過ごそうとしています。
そんな中、私はここ一ヶ月の間に、昨年の米大統領候補共和党予備選でマケインと最後まで争ったミット・ロムニー前マサチューセッツ州知事と、「オマハの賢人」ことウォーレン・バフェット氏という、世界的な有名人のお二人に会う機会が運良くあり、ケロッグでの最高の思い出がまた二つ増えました。
3月31日: ミット・ロムニーとの座談会
昨年の米大統領選では、私もご多分にもれずオバマ氏を応援していましたが、同時に予備選の段階で個人的な理由により密かに注目していたのが、ミット・ロムニー前マサチューセッツ州知事です。
- キリスト教徒から異端とみなされるモルモン教徒である
- 党内では穏健派とみなされている(予備選では不利)
- 全国的知名度が他候補(マケイン、ジュリアーニ)に比べて劣る
ベイン・アンド・カンパニーの元CEOにして、ベイン・キャピタルの共同創業者でもある彼の経済・財政政策の手腕は高く評価されており、今の経済危機がもう少し早めに火がついていたら、あるいはダークホースのハッカビーが予備選序盤であれだけ躍進していなかったら、オバマはともかく、マケインには勝てた可能性が十分にあったのではないかと思います。

一応オフレコのミーティングということになっているので、話した内容はあまり詳しく書けませんが、経済危機への対策に関する話を中心にしつつも、時に冗談や裏話などを交えながら、終始楽しく和やかな雰囲気の中、議論がはずみました。
メディアでは、しばしば彼は「やり手だが、面白みのない堅物の優等生」というイメージで描かれることが多いように見受けられますが、実際に会ってみて、とても知的で説得力があるだけでなく、強いカリスマ性と誠実さ・人間的魅力も兼ね備えている人物だという印象を新たにしました。
4月17日: ウォーレン・バフェットとのミーティング
ミット・ロムニー氏との座談会の時と同じようなプロセスで、希望者の中から書類選考によって我が校から27人の学生が選ばれ、オマハで他校(シカゴ大、コロンビア大、MIT、他3校のビジネススクール)からやってきた学生たちと合流しました。
ご承知の通り、バフェット氏といえば米フォーブス誌による世界長者番付でビル・ゲイツに次ぐ2位の大富豪で、投資家の神様みたいに扱われている人物ですが、実際に会ってみると、一見素朴で実直な好々爺といった風情で、例えばレストランとかで隣に座ってても、ちょっと気付かないかもしれないと思われるほど。入ってきた途端に部屋中にカリスマがみなぎるようなミット・ロムニー氏とは対照的で、その辺りが、他の人に一目置かれてなんぼの政治家に転身して成功したビジネスマンと、我が道を行く投資理念と経営手腕だけを頼りに莫大な富を築いたビジネスマンの違いなんでしょうか。
でも話しはじめると、冴え渡る知性と円熟した知恵がほとばしり、さすがに一代で世界の経済界の頂点に登りつめた人物だなと納得。その中からいくつか心に残ったバフェット氏の言葉を紹介しましょう。
- (「もしも25歳に戻ることができたとしたら、何をするか?」という質問に対して)現実の人生でしたことと特に変わらないことをするだろう。人に雇われず(work for myself)、自分の好きな仕事をできれば(do what I love)それで良い。
- 自分がうまくやってると思えることをできていればそれで幸せで、財産の桁が増えることなんて大切じゃない。(I was happy doing what I was doing as long as I felt successful, and the number of zeros didn't really matter)
- 私がやっていることをするのには脳味噌はあんまり必要ない。もしもIQが130以上ある人は、超過分を誰かに売ってしまっていい。投資に重要なのは自分の頭で考える能力、それに必要な程度の知性、そして何より大事なのが近視眼にならないでいられる気質(temperament)だ。
- 短期投資で勝てる方法を私は知らない。私は、勝ち方が分かっている自分のゲームで戦う。(I don't know how to win in short-term investments. I play my own game that I know how to win.)
- (自分の子供達に各々の財団を用意した後、自由にやらせ一切運営や活動内容に口出しはしなかった理由として)フィランソロピーってのは長期で考えなくてはならず、2-3年で結果についてどうこう言えるものではない。
- 環境の問題は深刻だ。既存の市場システムに手を入れて、未来の世代へのコストを勘案する(modify the market system to take into accout future costs)ようにしないといけないが、問題はそのやり方だ。いずれにしろ、人々に自己利益に反する行動を取らせるのは極めて難しい。私がオバマに投票した理由の一つは、彼はこの問題をより良く理解していて、人々が理解できるように説明し、説得する能力があると思ったからだ。
- (「将来どの産業が発展すると思うか?」という質問に対して)20年-30年後を見通して、どの産業が発展するか言い当てることは不可能に近い。インターネットがどれだけビジネスに影響を与えるか、95年当時ビル・ゲイツ等と話し合った時には誰も想像がつかなかった。ただ言えるのは、人間は人間の潜在能力をより良く活用できるシステム(system that unleashes human potentials)を生み出し続けてきたし、今後もそうし続けていくだろうということだ。
機知とユーモアに富んだ応答で、2時間余りにおよんだミーティングの時間はあっという間に過ぎていきました。昼食は、バフェット氏が長年通っているというPiccolo Pete's Restaurantで、彼の奢りでステーキをご馳走になりました。
その後、なんと参加した学生一人一人とツーショットでの写真撮影というサービスぶり。もちろん彼にとって一銭の得にもならないのに、いやな顔一つせず、200人近い学生と茶目っ気たっぷりに色んなポーズでの写真撮影のリクエストに応じる姿には感嘆させられました。信じがたいほど気さくな方で、人と接するのを本当に楽しんでいらっしゃる様子でした。いやー、ほんと頭が下がります。
コメントする