長かった2年間のハネムーンも遂に終わりに近づいてきた。(自分の場合渡米直前に結婚したのでガチハネムーンでした…)Kellogg卒業まで2ヶ月を切り、この2年間を振り返ることが多くなってきた。最近、少しずつ学校生活から気持ちが離れ始め、次のステージでの新しい挑戦へと気持ちが切り換わりつつある。
MBAに来る前は、新卒以来6年間のプロフェッショナルファームでの仕事から来る疲れ/飽きと、がむしゃらに真っ直ぐに最短距離を突っ走るキャリアや人生への飽和感や疑問から、とにかく休みたい、遊びたい、自由になる自分の時間が欲しいという気持ちが強かった。今考えるとアホみたいな話ですが、「2年間じゃ足りなかったらどうしよう…」なんてちょっとだけ心配してみたり。
いざ2年が過ぎ、当初はまさかこんな気持ちになろうとは想像だにしていなかったが、最近、とにかく仕事がしたくてしょうがない。ここ数ヶ月、もう夏休みはいいから、ハネムーンは十分に楽しんだから、とにかく早くビジネスの現場に戻って新しい挑戦と成長を体験したい、緊張感のある環境で世の中にインパクトを生める仕事がしたいという気持ちがどんどん大きくなっている。いい加減充電も完了したってことでしょか…
1Y vs 2Y
実は当初MBA留学を考える際に、Kelloggの1Y(1 year)プログラムも選択肢として一瞬頭をよぎった。コストと期間を最小限に抑えつつ、内容的にはある程度同じものをカバーできるので。一方で、1年間では休養/充電期間、自分探し期間としては少し短いのと、何と言っても夏休みやインターンが無いのが致命的と思い、(そして何よりの本音は、「せっかく楽しい時間を過ごすなら長い方がいいに決まってるっしょ!」っていう)最終的には2年間のプログラムを選択した。こうやって2年間を過ごしてみて、その選択は大正解だったと思う。
この2年間で自分に起こったことを時系列でクイックに追うと、以下のような感じだった。
●最初の半年はとにかく英語と学校に慣れることに精一杯。
●一年目の春くらいからやっと環境に慣れ、少しずつリスクを取れるようになり、新しいキャリアの方向性を考え始める。
●夏にアメリカのベンチャーでインターンをやりつつ、腹を括ってアメリカで就職活動を始める。
●秋学期の4ヶ月は大不況の中アメリカ人の中で泣きそうになりながら、吐きそうになりながら米国内で就活をし、疲弊する(が、多くの学びを得る)
●年末にオファーを頂きやっと落ち着いたところでまったりと冬学期を過ごしつつ、学校の授業はメリハリを強くし、自分のやりたいこと、勉強したかったことにさらにドカッと時間を使う。
●授業の数も少なく緩めの最終学期(春学期)にいい加減学校にも飽き始め、働きたくて働きたくてどうしようもなくなる
という一連の流れだった。そういう意味では2年間くらいが丁度良かったのかなと。自分の場合だと、一年だと「慣れて終わり」で残尿感満載で日本の元の生活にビタッと戻ってたような気がする。
心に残った一枚
さて、前置きが長くなりましたが、今回はちょっとした小ネタ。Kelloggの2年間の中で、「心に残った一枚」。よく戦略コンサルタント時代に、自分がやったプロジェクトの中でクライアントの経営陣を動かした「キラースライド」や「ブレークスルーとなった一枚の定量分析グラフ」みたいなものをサニタイズ(匿名化)した上でチーム内や社内でシェアしたり、自分の成長のための引き出しとしてストックしたりしていた。そのパクりじゃんって話ですが、この2年間を振り返ってみて、「ああ、これ印象に残ってるな」というネタについて。
リーダーシップ対ハードスキル
以前このブログでも書きましたが、元BaxterのCEOで今は引退してMadison DearbornというChicagoベースのBuyout系のPrivate Equityで役員をやっている、Kraemer教授の名物授業であるManagerial Leadershipで、先生が3, 4回繰り返して言っていた言葉と、そのときに先生がサクッと黒板に書いた、リーダーシップとハードスキルに関するシンプルなグラフ。
最初にお断りすると、言ってる事自体は余りにも当たり前です。どんなビジネスパーソンだってそう言われればそりゃそうだと思うし、どんな会社で働いてたって言われること。基本中の基本。でも、世界最高峰の経営者の一人であるKraemer氏が、敢えてそれを分かった上で、僕らの将来のために意志を込めて、口を酸っぱくして語ってくれたこと、彼自身の成功/失敗体験を交えて面白おかしく語ってくれたこと、また、偶然にも当時(そして今も)正に自分自身が強い問題意識を持っていたネタだったこともあり、深く心に刻まれた。
(ミシガン湖のビーチ。つかもはや海っす)
(補足1:ちなみにKelloggではマイクロエコノミクスやファイナンス、オペレーション等の授業で示唆深いグラフや分析枠組みはいくつも見せられた。緻密な統計/定量分析やマイクロエコノミクスに基づいた戦略的意思決定を強みとするKelloggなだけに、それはそれで知的に大変面白かったし、戦略コンサルティング出身の自分から見ても目からウロコな内容も多く、学びも大きかった。が、一方で、結局最も深いレベルで心に残ったのはそういうテクニカルなのじゃなく、もっとゴリッと本質的な、生き方とか、価値とか、人間の心とか、そういう話だった気がする。
個人的には、どうせハードスキルなんて現場で身を持って学ぶのが最も効率的な学習法だし、そうしない限り本当に武器として使えるレベルでは身に付かないと思うし、テクニカルな実務はその道の専門家の仕事だし、枝葉は使わなければ卒業して数ヶ月で忘れるし、大事なのは骨格となる考え方を理解してることだと信じるので…あくまで個人的な意見ですが。
あと、こと経営コンサルティングに関しては、MBAで学ぶ「ハードスキルや知識そのもの」はコンサルティングでは余り直接的には役に立たないと巷でよく言われる/コンサルタントの方が言っているが、個人的には間違ってないと思う。経営の基礎知識自体は必要だが、そんなもん自分で数週間掛けて教科書30冊をゴリゴリインプットすればカバーできるので)
ステージごとに必要とされる資質の変遷
さて、本題。このグラフ。横軸に時間軸、または年齢、社会人歴、または社内でのポジション/階級を取り、縦軸に、それぞれの時間軸で必要となる資質/スキルに占める要素の割合を%で表すグラフ。グラフ自体は小学生でも理解可能な超シンプルなグラフ。彼のメッセージは、以下のようなものだった。
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多くのMBA学生や若いビジネスパーソンが誤解していることがある。
確かに、新卒で始まるあなたたちのキャリアは、最初はとにかく基礎となる足腰、基本スキルを身に付けることから始まる。コンサルタントもバンカーもマーケターもfinance屋も、土台となるその分野のハードスキルをきちんと身に付けることが全ての出発点。それがキャリアという試合の舞台に立ち、ゲームに参加するためのtable stake(場所代)。
でも、皆が誤解している、またはその重要さに気付いていないのはそこから先の話。ハードスキル、知識、IQが重要なファクターであるフェーズはあっと言う間に終わるということ。そして、そこから先は、リーダーシップ、人を動かす力、EQ、(日本的に言うと「人間力」)の勝負になるということ。多くのMBAホルダーやプロフェッショナルたちは、それが本当にどれだけ早いタイミングで、どれだけ急速にシフトするかに気付いていない。30歳前後で卒業する君たちのキャリアは、あっと言う間に後者の勝負になるんだよ。ハードスキルは、キャリアの出発点やMBA卒業直後では大事だが、それはほんの少しの間だけで、そこから先のキャリアではあなたたちを導いてはくれないんだよ。と言うもの。
でも君たちが誤解しちゃうのも分からないでもない。MBAでもそういうコースでハードスキルを一生懸命教えるし、多くのMBA生はそれを身に付けるためにMBAに来てるわけだし、コンサルティングや投資銀行は未だに人気就職先で(*この話をしてたのはリーマンショック前)、そこでは少なくともジュニアの時代はハードスキルが極めて重要だし。
だからこそ、このKelloggに来たみんな、そして特にこの授業を受けた君たちは、絶対にそこを見誤っちゃだめだ。ハードスキルは所詮Only goes so far. もっともっと重要な、そして近い将来あなたのキャリアのほぼ全てを決めるのはそこじゃない。リーダーシップ力、人間力、価値に基づいていろんなバックグラウンドや価値観の人たちを共振させて、引っ張っていく力なんだよ、と。
(補足2:個人的に補足すると、彼も別に決して「知識/ハードスキルや知恵/IQが『不要である』」と言ってる訳ではない。彼自身元々完全にFinanceのexpertとしてキャリアをスタートしてるし。僕も不要だとは全く思わないし。むしろ必要不可欠だと思う。T字の縦棒、軸足として。MBAでもきちんと勉強しなくちゃいけない土台として。ここが無いとそもそもお話にすらならないというか、試合にすら出してもらえないと思うし。
でもそれらはあくまでバッターボックスに立つためのチケットに過ぎない。そこから先のキャリアを作り、差別化してくれるのはそこじゃないよ、ということ。ハードスキルや知識/知恵を過信し過ぎちゃだめだよ、それ「だけ」に頼っちゃだめだよ、それは本質じゃないよ、というのがメッセージの幹だと思う。少なくとも僕はそう解釈しました…)
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(シカゴの名所の一つ、ウォータータワー。僕の中で勝手にドラ○エのほこらと呼んでます)
Consulting vs General Management
もう一つ、これに付随して、別の機会で聴いたKraemer先生の別の言葉も強く印象に残っている。就職課主催の就活セミナーの企画でKraemer先生が、「コンサルタントキャリアとジェネラルマネジメントキャリアについて考える」という講義をしてくれた。非常に共感し、印象に残ってるのは以下の話。(ちなみにジェネラルマネジメントというのは漠とした言葉ですが、この場合、事業会社でのキャリア、CEOをはじめとしたトップマネジメントを目指すキャリアという意味合い)
これも仰ってることは散々世間でも語られてる当たり前の話なのですが、多くのコンサルタントや経営人材を見て、一緒に働いてきた彼の言葉を通じ、強い説得力を感じた。以下、彼の言葉の抜粋。
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最終的に経営リーダーを目指すなら、そしてGeneral Managerとしてのキャリアアップを目指すなら、必要な資質は大きく3つある。
●一つ目は、土台となる分析力、知識/知恵。
●二つ目は、Valueに基づいて人々を導く力。リーダーシップ。人間力。現場のたたき上げの途上国の中卒のおばちゃんや、アジアのベテランの頑固なエンジニアや、新卒のちゃらい兄ちゃん姉ちゃんも含め、いろんなバックグラウンドのいろんな能力の人たち皆に、「こいつのためにいっちょやってやるか!」って思ってもらえんのか?そういうことに興味を持つか?
●三つ目は、Execution(実行)する力。責任を持って意思決定し、やり切って、結果を出す力。自分でどれだけ腕まくってget things done出来るか。Disciplineを持って、Consistentに、インパクトのみに集中して、結果を出せるか。それによってCredibilityを積み上げ続けられるか。株主やBoardやtop managementから見て、「うん。こいつにならこのビジネス丸々任せられるな!」と思って貰えるか。
経営リーダーを目指すなら、卒業後コンサルタントをやるという選択肢は、一つ目の要素を短期的に効率的に鍛えるという意味ではありかも知れない。でも、気をつけなくてはいけないのは、二つ目と三つ目が欠落するということ。数年ならまだしも、MBAを出てから7年も8年も過ごすと、経営リーダーのキャリアを志向することが難しくなる。次から次へと複雑な問題に答えを出すことには上手くなる。でも、二つ目の要素は「まあ、なんとなく」になり、三つ目の要素は「全然わからん」になっちゃうよと。
もちろん、コンサルティングファームの奴らは、「いやいや、人間力も大事だし、我々はお客さんの中に入り込んで腕まくって実行支援もしてますから!」って言うだろう。でも、それはコンサルタントを使い、コンサルタント出身者をBaxterで雇って一緒に働いてきた自分から言わせると、ちゃんちゃらおかしい。Implementation consultingと、ボトムラインに責任を持ってget things doneするのは全く持って別の話。
もし君が本当に一つ目の要素が大好きで、あたかも数学の問題やゲームのように次から次へと難しい経営課題を解き続けることが天職だと感じ、それだけをやりたいなら、コンサルタントをやり続ければいい。でも、もし最終的にGeneral Management/経営者を目指すなら、長くい過ぎるのは危険だ。もちろん一部の例外はいるが、多くの場合、経営人材にアジャスト不能になる恐れがある。コンサルティングの仕事にaddictedになって辞められなくなる、本来望んでいたキャリアを諦めることになるリスクを認識すること。
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なんで刺さったか?(自分の場合)
僕自身、そういうことをずーっと感じてきて、そうだよな、そうなんだよね?そしてそうだとすると、自分はここから先どういうキャリアを歩むべきなんだ?と自問自答し続けてきた。その問いに真正面からクソシンプルに答えてくれるメッセージだった。
新卒で戦略コンサルティングファームで働いてくる中で、当初はそれこそスキルと知恵の世界にこれでもかというくらいどっぷりと浸かった。日常的に習慣的に、「擦り切れるほど」頭を使い続けてきた。あらゆる経営/ビジネス書籍やMBAの教科書を読み漁り、毎日自分の技を磨くこと、少しでも優れた戦略コンサルタントになることだけを考えて過ごして来た。
それでも、外から見るとあたかもハードスキルが重要かのように見られがちなコンサルティングの世界でさえ、若いコンサルタントにとってもインターパーソナル/ソフトスキルはいいコンサルタントになるための一つの条件とされていたし、殊シニアマネジメントになればなるほど、知恵は前提条件に過ぎず、人間力の勝負、全人格的な戦いになるということは入社時から言われ続けていたし、多くの先輩コンサルタントの成功と失敗を見る中で理解していった。
そんな中、自分が若くして、人生経験や人間としての「醸成」が足りぬまま上のポジションが上がっていくことで生じる、「何かが足りねーんだよなー」という欠落感を少しずつ感じ始めていた。このまま真っ直ぐ問題解決/戦略立案のプロとしての線路を走り続けることで、ともするとどんどん「言ってる事は正しいし、尖ってるし、鋭いんだけどさ…」という頭でっかちで偏った"優等生"になっていくんじゃないだろうかという漠とした危惧が大きくなり、一方でそれを押し殺しながらムキになって走る自分が生じ始めていた。
もし、「孤高のカリスマ天才コンサルタント」みたいのが自分の描く理想像で、そこに一点の曇りも無いなら、何一つ迷うことなく真っ直ぐ突っ走ればいいと思う。それで周りも自分も皆ハッピーだったと思う。(大前研一さんの時代、20年前ならともかく、情報の非対称性が薄れ、コンサルティングの仕事もお客さんも進化し、広い意味でのコンサルティングがある意味commoditizeされてしまった今となってはそれもfeasibleじゃなくなりつつあるが…)だけど自分の場合、そもそもコンサルタントを一生やりたいのかという部分に確信も無かったし、どういうキャリアを目指したいのかも良く分からなかった(エッセイではカッコいいこと書いたが…)。だからこそMBA留学に行って、一度幽体離脱して自分を眺めてみたいと思うに至った。
このグラフ、というかこのグラフを書きながら喋ってくれたKraemer先生の言葉で、「そうだろ?」と思ってたことを、成功している一流の経営者、心から尊敬できる師匠からバチッと「その通り!!以上。」と言って貰えた気がして、非常にすっきりとし、自分が進むべき道に迷いが幾分無くなった。頭の中に掛かっていた霧をスパッと晴らしてくれた。
Kelloggで過ごしたこの2年間の中で、いろんな人との出会いを通じ、自分自身をグラングランに揺さぶってくれる刺激や情報に数え切れないほど出会ってきたが、そういう意味で、このグラフと、それも含めた先生からのメッセージは特に印象に残った。
MBA体験は千差万別
と、いろいろ書いてみたものの、読み直してみて改めて思うのは、こういう話って、まあ、極めて個人的な話だし、独りよがりだし、自分以外の方が読んでもあんましピンと来なくて、「ふーん。で?」って感じかもなと…。だとしたら、すみません…。もちろん自分の経験不足、表現力不足による部分がでかいですが…
当たり前ですが、MBA体験は十人十色。人によって千差万別。その人の生きてきた人生、歩んできたキャリア、価値観や感性のアンテナの向きの違いによって、全く違った学びや刺激を拾い、全く違った価値を見出していくものだと思う。同期の日本人留学生に話を聞いてみても、20通りの全く違った答え返ってくると思う。共感出来る部分もあれば、ちげーなーってとこもあって。それでもお互いcherry pickingで学べることはたくさんあって。まあ、その多様性、懐の深さもまたMBA留学の良さかなと。いうことで超強引に締めに行ってみました…
MBA体験の価値、Kelloggの素晴らしさの一面が少しでも受験生の皆さんに伝われば幸いに存じます。
IM Class of 09
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