変革のリーダーシップ(Leading Strategic Change Process)

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ここらで一発、ハードコアな授業ネタを。今学期、前回紹介したSports Management and Marketingに加え、もう一つ「取って良かった!」と思える素晴らしい授業を取らせて頂いている。

以前も紹介した、Kraemer先生のManagerial Leadershipと同じManagement and Organization Majorの一つ、Ithai Stern先生の「Leading Strategic Change Process」。一言で言うと、組織変革や企業のターンアラウンドにおけるリーダーシップ。(ちなみにターンアラウンドの具体的な作業/スキルといった実務サイドをその道の実務家から学ぶ授業として、これとは別にManaging Turnaroundという授業もある。)

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隠れた名授業

去年、Class of 08の先輩方が卒業する前に、何人かの方々に授業選択のストラテジーや「お勧め授業/地雷授業」についてヒアリングをしまくった。その中で、何人かの方から勧められた授業の一つがこの授業だった。且つ「世間的な評価と実際の良さに大きなギャップがある隠れキャラ」的授業で、少ないビッディングポイント(授業選択の競り制度での持ち点)で取ることが出来る「オイシイ授業」とのことだった。

Kelloggでも五本の指に入るような『ネ申授業』の域に到達するほどぶっちぎった授業ではない。アメリカ人の学生でも知らない人もいるし、また、一部の生徒は「いまいちしっくりこなかった」と、人によって好き嫌いが分かれる授業でもある。であるが故に、ビッディングで高値がついている訳でもない。

そもそも「お勉強」に対する不信感が強く、斜に構えがちな僕自身、受講するまでは正直懐疑的でもあった。「実践ありきの組織変革/ターンアラウンドを授業で学ぶ」というアプローチがどこまで有効なのか図りかねている部分もあった。生意気にも「現場でしか学べないものを学校で勉強する意味なんてあんの?」と。偉そうにも「ま、物は試しで、駄目元で受けてみっか…」ぐらいのつもりで取ってみた。

ところが、実際に取ってみてここまで8週間を終え、「やっべこれ相当いいじゃん!」と感じている。期待値を大きく上回ってくれた。大変刺激的で学びも多い。授業の設計の完成度が極めて高い。恐らく自分がこれからのキャリアでリーダーを目指し、組織変革やターンアラウンドの局面を経験する中で、確実に生きるであろう話を扱っていると感じる。多分そういう立場に置かれ、道に迷った時、何度もこの科目のリーディングやハンドアウトを見直す気がする。

先生も比較的若く、最近Kelloggにジョインしたこともあり、学生内でのブランドがまだまだ確立していないが、近くトップクラスの人気授業になってもおかしくないと感じる。

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Stern先生

どういう先生か。ご出身はイスラエルだろうか?まだ30台じゃないかな?鋭く、教授としての実力もあり、人間的にも信じられる、素晴らしい先生だと思う。また、教えること、将来のリーダーを育てることに対する強い情熱とコミットメントをひしひしと感じる。市場競争原理に依存しすぎたアメリカ的資本主義のmaterialismや株主価値偏重、莫大な経営者報酬に対して健全で客観的な批判の目を持ち、人間力、ソフトスキル、組織文化や、従業員の「心」の重要さへの強い信念を持っている。

加えて、Kelloggやその哲学に対する共感とパッションをひしひしと感じる。授業の中で、「高い金だけ払って既存のやり方/規範を押し付ける学校はごめんだ」と言っていた。自分は教授と学生の自主性を尊重し、高い自由度の中でインタラクティブにやらせるKelloggのスタイルが好きとのこと。

非常によく勉強しているし、生徒からのフィードバックを受けて地道に教材や授業の改善を重ねているタイプの先生だと思う。(Prof. Hennessyの記事でも書いたが、結局時間を掛けてすばらしい先生になっていくのはこういう先生だと思う。)

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自分に取って、組織変革やリーダーシップを「授業で」学ぶことの意味

(一瞬私事で大変恐縮ですが…)自分は学生の頃から組織や企業を再生し、強くし、競合に勝って抜きん出る、ということに対して強い興味を持っていた(ガキのころからずーっとチームスポーツに関わって来たことも大きな理由だと思う)。授業そっちのけで経営戦略や組織変革、リーダーシップ論に関連した本を読み漁っていた。(今でも好きなのは元BCGで現ミスミCEO、三枝匡氏の三冊の本

また、前職の戦略コンサルティングファームで働いていた頃最も燃えたのもこの手の企業再建/組織変革のプロジェクトだった。お客さんが(少なくともトップと志のあるミドル/現場が)人生を懸けて真剣に戦い、かなりのスピード感の中経営陣と一緒に仕事が出来、実行までお手伝いさせて頂け、ダイレクトに結果が出るケースが多かった。上手くいったときに最もお客さんに感謝され、「心が震える」レベルで感動出来たのもこの手のプロジェクトだった。

一方で、MBA留学をするに当たり、経営戦略、問題解決に関わるあらゆる分野の中で、最も「インテンシブに、且つ体系的に学んでおきたい」と思っていた分野もこの「変革リーダーシップ」の分野だった。戦略でもマーケティングでもオペレーションでもファイナンスでもなく。

組織変革をお手伝いする中で、その難しさを嫌と言う程思い知らされてきた。どういうやり方があって、どういうところに落とし穴があって、どういう原則やtipsがあるのかを体系的に学んでおきたい、実際に変革に成功したり失敗した組織やリーダーたちの例を千本ノックで追体験し、今後自らが実践し、学習を累積させていく上での「塗り絵の枠組」を集中的に作っておきたいという気持ちが強くなっていた。

もちろん、この手の話は正解なんてあり得ないし、座学じゃなく実践ありきだ。現場でしか本質的な学びは生じ得ないと強く信じる。それでも尚、真っ暗闇の中を手探りで進むよりは、物事を組み立てる思考の枠組み、自分の行動をチェックする「リトマス試験紙」があるのはある程度助けにはなるだろうなとも感じている。決してフレームワークや知識を妄信する訳では無いが、後々自分が行動したり考えたり軌道修正する上での座標軸として、そして今後現場でリーダーとしての学びを蓄積させて行く上での引き出し/塗り絵の枠組み作りの初期バージョンとして、まあ、無いよりはましだよねと。

なので、そのものずばりの「企業や人の変革」を扱っているこの授業は正に自分の興味や情熱のど真ん中にある授業だった。

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具体的にどういうことをカバーするのか

1.設計

講義3に実技が7という割合。ロールプレーやグループワーク、ディスカッション、生徒によるプレゼンの比重が高い。

面白いのは、後半で4回分の授業をまとめ、週末に一発どかっと一日掛かりで組織変革シミュレーションやるという企画。これは盛り上がりました…6人の男女混合多国籍チームでの作業。実在の企業と人の、実在の変革のチャレンジを扱う。非常に面白く、考えさせらる体験だった。癌となる人材のクビや従業員へのコミュニケーション等で多くの失敗を疑似体験した。後から自分たちの意思決定を時系列で棚卸しし、何が正しくて、何がまずかったのか、それはなぜか、じゃあどうするべきだったのか、それはなぜか、をゴリゴリネチネチと考え、議論し続けた。

2.リーディング

そして特筆すべきはリーディング。課される読み物が例外なくムチャクチャ面白く、示唆深い。いろんな自省や間接学習を誘発してくれるネタが仕込まれまくってる。

3.多様なケース

ケースでもいろんな組織変革の事例を扱う。スタバやHome Depot、ソニーのStringer、英国のBBC、ベンチャー企業や、AppleやDellといったカリスマから生まれたハイテク企業、そしてもちろんNissanのカルロス=ゴーン。

それらを通し、いろんな変革リーダーの成功/失敗体験を追体験することで間接学習を促していく。

いくつかご紹介。

●意気揚々と組織変革に挑むもいくつかの要因により失敗してしまい、反対派からの氾濫に合い、組織から追放される憂き目に逢った主人公の話

●軍事産業向けのGPSで大儲けしてきた某社が、需要の飽和と、コンシューマー市場の隆盛とそれに乗じた競合の台頭により180度戦略と組織、文化を変革する必要に迫られる。そこでproduct out からmarket inへと全てを作り変えようとするが、変化の必要性に気づかぬR&Dと製造から総スカンで干される変革リーダー。さて、どうする?

●趣味で始めた懐かしデザインのアパレルが時代の流れに乗り大ヒット。あれよあれよと大企業に。ところが、戦い方の変更の必要性に気付かず、にビジネスを回し切れなくなり、民事再生法を申請することになった創業社長

●最近の事例で言うと、何十億の報酬を貰う自動車Big 3の経営者たちがprivate jetでDCに乗り付け救済を求めるという話。どれだけ感覚が狂ってるか。従業員はどう思う?Walk the talk(率先垂範)の意味などなど。(YOUTUBEでJALの西松社長も紹介されました)

こんな感じで何十もの組織変革事例をいろんな角度から分析し、要素を因数分解し、あらゆる切り口からの「鉄則」や「tips/べからず」を紹介し、腹落ちさせていくプロセスを辿った。

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4.ビジネス以外のケース

他にも、面白いことに、specificな要素を切り出し、学びの幅と深みを出すために、敢えていくつかビジネス以外の事例を扱った。

●印象的だったのがマドンナに関する分析記事。必ずしも最も美しいわけでもなければ、歌や演技が突出しているわけでもない。にも関わらず、無数の歌手や女優が飽きられ消えていく中、エンターテイメントのトップに君臨し続ける彼女の一体何がすごいのか?彼女の強いパッションや意志もさることながら、その「変化する能力」を上げていた。

ショービジネスの世界に於いて変化出来ないことが極めて危険な(そしてほとんどの芸能人/女優/歌手が陥る)落とし穴。そんな中、常に世の中の変化、ファンの嗜好の変化を敏感に察知する高いアンテナ/嗅覚。それに応じて、大きく自分自身を再構築/再定義し続ける「変化を常態とする」生き方。そのために睡眠時間も惜しんで徹底して訓練するdiscipline。そしれそれら全ての根元にある強い達成動機。それらがマドンナの強みだと。それらを彼女に関する記事やビデオクリップを見て議論していった。

以前、吉本興業の島田伸介氏が語っていた、世の中の『面白い』の定義やセンス自体が進化していく、従ってそれを察知し、自分のお笑いの型自体を進化させないと同じ事をやっていても必ずつまらなくなり自滅する、といった類の言葉を思い出させられた。あとアメトークで猿岩石有吉やムーディ勝山が語ってた「一発屋にならないために」講座での、今の日本のお笑いで加速するネタ/キャラの高速使い捨て化の流れなど。

●1949年に起こった大規模な山火事で、それまで無敵の実績を誇ってきた山岳消防隊が全滅する惨事が起きた。その際の彼らの心理やコミュニケーションを再現し、なぜそのような事態が起こったのか、どうやれば防げたのか?をリーダーシップの観点から考える。

●また、面白かったのは、敢えてビジネス以外の世界でのチェンジマネジメントの話を扱った回。映画Dead Poet Society(邦題「いまを生きる」)でロビン=ウィリアムス演じる主人公の教師が50年代の東海岸の伝統的establishmentど真ん中の全寮制中高一貫有名進学校に赴任し、学校を変えようとする話。結局守旧派からの強い抵抗に遭い、上手くいかず、解任されてしまう。授業では、もっと大きな時代の背景、関係者たちの心理/価値観や利害関係もう一度深いレベルで分析し直し、本来どうアプローチすべきだったのかをゴリゴリ議論したりもした。

とまあそんな感じ。これはこれで新鮮で面白いし、変化について学ぶという意味ではビジネスの事例以上に刺さるものだった。

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(あくまで「目の付け所」としての)フレームワーク/セオリー

繰り返しになるが、大前提として、変革のリーダーシップは、100%実践ありき。フレームワークやセオリーはあくまで補助的に思考の刺激剤やチェックシートとして働くに過ぎない。その上で、この授業で紹介されたいくつかのフレームワークやセオリーのさわりだけサラッと紹介させて頂こうと思う。

ちなみに、個人的にはこの分野の学びについては、幹となるセオリー/フレームワークも去ることながら、どちらかというと局面局面で現場で拾った「100の小っちゃなtips」の積み重ねの方が効果的だったりもする。ここでは紹介されないが、授業ではその辺の細かくpracticalなコツも結構カバーされていた。

1.変革プロセスモデル

BCGのチェンジモンスターの本でもあった考え方にかなり近いが、組織変革の基本形となるプロセスと、そこでの正しい行動/コツを紹介。

大きく3つのステージ(Planning、Execution、定着化)に別れ、さらに7つのフェーズ(現状/環境認識、変革チーム立ち上げ、変革の絵柄/ストーリー作り、危機感醸成、変革ビジョンの伝播/巻き込み、実行、刷り込み/定着化)を通っていく。授業ではそれぞれのプロセスでの具体的なティップスを学んでいく。例えば、
●変革リーダーにはどういう人を選ぶべきか
●何人くらいの変革チームを立ち上げるべきか、どういうクライテリアで人選するべきか
●どういう順番で誰を巻き込んで行くべきか(後ろ盾〔ゴッドファーザー/チャンピオン〕、協力者/賛同者、傍観者、抵抗勢力)
●ボトルネックとなる抵抗勢力とどう付き合うか、クビにするとしたらいつどうやってやるべきか
などなど

Cim20(1).jpg2.組織変革の5つの壁

(1)変革の必要性にすら気づけない
(2)変革の必要性には気づくが、真剣に、危機感を持って、抜本的な変革をやろうとしない(過去の成功体験や既存のビジネスの旨みに溺れる、小手先の修正で対応しようとする)
(3)考えはするが、どうやって変革を行えばいいかがわからない
(4)計画まではするが、実行段階で頓挫
(5)短期的には変革に成功したかに見えるが、そこで慢心してしまい、組織の隅々まで新しい価値/戦略/行動が定着化することなく、結局元に戻ってしまう

●授業の最初に提示され、道中常にリマインドされる命題として、「変革をしようとする企業は多いが、そのほとんどが失敗する。そして、その7割が実行の段階で失敗する」というものがあった。なるほど納得。「わかっちゃいるんだが出来ねえんだよ」っていう。

3.変革の整合性モデル

●変革に於ける極めて重要なファクターとして、あらゆる要素を「揃えながら」変革することの重要性を学んだ。

●競合環境やマクロ経済、技術変化といった環境要因に応じて、戦略、戦場、武器、ターゲットを変更すべきなのは自明だが、その際に、それに合わせてあらゆるコントローラブルな変数を変え、ベクトルの向きを合わせ、全体として整合性を取って行かないと、変革は失敗するという話。

●組織体制/職位体系や評価報酬制度に加え、社内での規範/ルール、文化やコミュニケーションの仕方まで意思を込めてダイヤルを合わせて行く必要があるという。
それらの話しを実際の成功例や失敗例を元に学ばせて頂いた。

party.jpg5.変革に影響を与える5つの力学

●実際に変革をマネジする上で、自身や組織を取り巻くあらゆる変数が変革の成否に影響を与える。それらは、経済や市場、競合という環境要因、戦略や文化、そこで働く人々という組織要因、倒産危機や社会的バッシングといった状況要因、組織内外での政治や力関係/利害関係という社会/政治的要因、そして信条や価値観、感情や動機という心理的要因という大きく5つのカテゴリーに纏められる。そしてそれらの軸の中で、変革に対してポジティブに働く変数もあれば、ネガティブに働く変数もある。

●これらの要素を見極め、理解し、ポジティブな力を梃子にしつつ、ネガティブな力にミートする打ち手を打って行くことが必要。

●特に、心理的要因の話では、人間のネイチャーでもあり、本能のレベルで誰しもが持っている「変化に対する抵抗感/嫌悪感」を、心理学的な実験、プロセスを辿って見せ付けられた。「人間はそもそも本能のレベルで変化を嫌うものだ」というファクトを生々しく理解させられた。

6.巻き込みに向けた人間マッピング

●チャンピオンやゴッドファーザーとも呼ばれる「後見人」、早いタイミングから共感して見方してくれる人たち、組織のほとんどを占める冷めた傍観者たち、強く反抗する抵抗勢力のそれぞれを、どうやって見極め、どういう順番で、どういうコミュニケーションで巻き込んで行くか。オセロの黒を白にパチパチ変えていくプロセス。

●フォーマル/インフォーマルなパワー、及び変革へのスタンス(協力/抵抗)の2軸に基づき、組織内の主要キャラをマッピングしていくことで打ち手を組み立てるプロセスを学んだ。

CDDEC4C5D120(6).jpg7.変革コミュニケーションの3つの「キャンペーン」

●変革は、危機感を生み、新しいビジョンを示し、共振を生み、さざ波を津波へと変えていくプロセス。そのコミュニケーションは大きく三つの軸で行う必要がある。変革の必要性と達成による報酬を伝えるマーケティングキャンペーン。志願者を募り、協力者を巻き込み、民衆を奮い立たせるミリタリーキャンペーン、根回しや寝技による抵抗勢力排除や後ろ盾獲得、「握り」といったポリティカルキャンペーン。

●それらのキャンペーンの中で、実際のメッセージの発し方はもちろん、パイロットプロジェクトや、ベストプラクティス視察、非情な数字/ファクトの付き付け、象徴的人事といたった、アクションレベルでのコミュニケーションの打ち手のロングリストと、その具体的な使い方を学ばせて頂いた。

●なるほど、個人的には確かにこれまでは変革のコミュニケーションに関し、ここまで網羅的/体系的/多面的に具体的な打ち手を見たことはなかった。理屈上考え得る手持ちのカードとその良し悪し、きり方を確認する作業。これに関しては特にダイレクトに勉強になるなーと思わされた。

8.E theory対O theory

●(もちろん現実にはこんなに簡単に二元論では語れないが、議論のために敢えてsimplifyすると)変革や経営そのもに対し、大きく分けると二つの考え方がある。一つは、80年代のコングロマリット/ポートフォリオマネジメント経営時代に大流行し、投資銀行やプライベートエクイティ(の多く)がより重きを置きがちな、経済的価値で企業や経営を見る、E (Economics) theory。従業員の心や長期的な顧客の満足度よりも、短期的にバランスシートを改善し、でかいコストを切って、数字のレバレッジを働かせて企業価値(A.K.A.時価総額)を向上する。ドライで数字に基づいたトップダウンのアプローチ。実際にこっちのアプローチに徹し、従業員から脅迫状を貰おうが組合員が自殺しようが容赦なく変革を進め、短期的に株主価値を上げて高い成功報酬を手にするターンアラウンド経営者も多くいる。

●もう一つは、戦後のアメリカや、長らく日本で主流だった、「人間」だったり、「心」を重視した、O (Organization) theory。組織は人であり、経営は人である。義理人情を大切にし、従業員を巻き込んでボトムアップでゆっくり時間を掛けて組織を変える。長期的な顧客の満足や関係を重視し、短期的な数字だけ、表面的なデータだけでは割り切れない部分も多いに許容する。

●あまたの過去の変革の事例を分析することで見えてくる事実は、どちらか片方に寄っている事例はことごとく失敗しているということ。「ビジョナリーカンパニー」などでも散々言われている通り、Eだけでは短期的な数字は改善しても、長期的に本質的に強い組織は生まれない。一方で、Oだけでは、従業員は頑張ってるし短期的にハッピーに見えるが、厳しさに正面から向かい合いきれず、結局ボトムラインの利益や株主価値ではハードヒッティングでtangibleな結果が必ずしも生まれない。両方を満たそうと思ってどっちつかずで中途半端になってももちろん駄目。大事なのは、その双方を高いレベルでバランスを取りつつ満たすこと。そのためには…みたいな話。

などなど。きりが無いのでこの辺で。改めて振り返ると、お腹いっぱいになるくらい20回の授業にぎっしり満載に内容の詰まった授業だった。

93y97j20(14).jpg要は…お勧めっす。

僕自身、MBAでの「勉強」に対しては元々かなり懐疑的なスタンスの人だった。特に、リーダーシップを学ぶということに関して果たしてどのくらい意味があるのか疑問を持ちながらの受講だった。が、殊この授業に関しては本当に受けて良かったと思った。自分で独学で学ぼうと思ってもなかなか学べなかったなと。そういう意味でビジネススクールで学んで良かったと思える科目の一だった。

Kraemer先生の記事でも書いたが、この手のリーダーシップや組織の話は、学校で勉強する対象としては、ともするとオ○ニー臭くなる/自己満足に終わるリスクが多分にある科目だと思う。知的な面白さを担保しなくちゃいけない一方で、現場での実効性が唯一絶対の価値になる。正直、Kelloggの中でもこの先生以外の先生で、実業バックラウンドの無い心理学や社会心理学、社会経済学系出身の先生の似たようなMORS(Management and Organization専攻)系の授業だと、ときどき、「学問じみてて、茶番臭くて、実戦の匂いがしない」と厳しい評価を受けている先生もいる。それだけこの手の授業は難しい。相当教える人を選ぶ。

その点、この先生のこの科目については、余りそういう匂いを感じなかった。先生自身の感受性の強さとイマジネーション力の高さ、真に世の中に貢献したい、そういうリーダーを創りたいというパッションの成せる業なんじゃないかとも思う。加えて、カチッとまとまった形でセオリーを紹介し、構造化された形で授業全体を設計し、かなり考え抜かれたプロセスを通し、学びを落とし込んでいく。先生自身が知恵を絞って、毎年改善を重ねることでいいものに育て上げている印象を受けた。
この手の話がお好きな方であれば、是非お勧めです。

松山達 Class of 09

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