Dean Jainとの会談

| | コメント(0) | トラックバック(0)

先週、ケロッグの名物校長のDean Jainに呼び出されて会ってきました。

いや、「呼び出されて」と言っても、別に何か悪さをしでかしたわけではないのでご心配なく!

ただ個人的に今回の経験は、ケロッグの特長をよく象徴しているできごとだと思ったので、今日はちょっとその顛末を書かせてもらいます。


jain_d.jpg
ケロッグの名物校長(学部長) Dipak Jain

++++++++++++++++++++++++++

学生の自主性を尊重し、また学生の意見・提案を積極的に取り込むというのが、ケロッグの校風の特長の一つですが、その好例と言えるのが、学部長と副学部長たちが、一学期に数回主催する昼食会。

毎回参加希望者の中から抽選で15人くらいの学生が招待され、学部長や副学部長と一緒に昼食を食べながら自由に意見を交換するというもので、私も興味本位で、先月一度参加してみました。


「ケロッグらしいなー」と思うのは、学生の発言にみなぎる愛校心と当事者意識。

これが日本の大学だったら、学生たちがかしこまってしまって優等生的な当たり障りの無い発言しか出てこないか、はたまた無責任な「当局」批判に終始するかということになってしまいそうな気がするのですが、学部長たちと同じ目線の高さで、率直かつ建設的に学校の経営課題を論じていました。

 
besanko_d_test.jpg
Strategy & Planning 担当 副学部長 David Besanko

ところで、数あるビジネススクール・ランキングの中で、最も信頼性があるといわれるBusiness Weekのランキングで、1位獲得回数最多、集計開始以来一度もトップ3にもれたことが無い唯一の学校として、他のライバル校に抜きん出た記録を持つケロッグですが、直近の2回のランキングでは続けて3位に甘んじています。

もちろん他にも色々と改善の必要な点はあるのでしょうが、何気に最大の弱点かもしれないと学生たちの間で囁かれているのが、実は校舎施設。

2年も過ごせば愛着もわいて来ますが、それでも客観的に見て、よく言えば質実剛健、正直言っちゃえばボロい。

特にこれと言って欠陥があるわけではないんですが、多分いわゆるトップ校の中ではダントツに古びた(と言ってもアンティークな感じじゃなくて)校舎だと思います。

 
たかが校舎と言うなかれ、これがなかなか学校を訪れる入学希望者やリクルーターの印象、さらには在校生や卒業生の士気・満足度に、地味だけど大きな影響をあたえるものらしいです。

(私自身、インタビューのため、どんよりした曇り空の中、人気の少ない週末のエバンストンを訪れ、ケロッグの校舎を初めて見たときは、特にシカゴGSBの美麗な校舎を見た直後だったので、正直「がっかり」感がありました。)


ケロッグの経営陣も、もちろんそこんとこは認識してますから、現在急ピッチで新校舎建築の準備が進んでいて、昼食会でもやはり話題に上りました。

当然これには、莫大な資金のファンドレイジングが必要になりますが、この不況下誰しも財布のひもがかたくなっていて、そう簡単にはお金が集まりません。

で、ハコをつくるためにお金を出して下さいと言っても、ドナーはのってこないから、イノベーティブでエキサイティングな研究アジェンダとリンクさせ、ハコとストーリーをセットにして「買って」もらわなくてはならないよね、と議論が展開。

 
hagerty_k.jpg 
Faculty and Research担当 副学部長 Kathleen Hagerty

そこでDean Jainが言うには、

「真にイノベーティブな研究ってのは、教授たちがリードしてくれるのを待ってるんじゃなくて、学生たちの方からもどんどんイニシアチブを取って、学生と教授が相互に刺激を与え合うような環境をつくらないとできないんだよ。

Financeだとか、Operations、 Marketingといった縦割りの機能の学習を超えて、学生達が現実の問題解決に学際的(cross-disciplinary)に取り組むことができるExperiential Learningの機会を充実させることに注力しているのも、そのためなんだ」

とのこと。
 
私も常々、こういうDean Jainが思い描くような学生と学校の関係こそが、ケロッグが誇る最もユニークな点であり、この特長をもっともっと尖らせていくことによって、他校の追随を許さない突き抜けた存在になれるはず、と考えていたので、ここらでちょっと発言してみました。


「私自身Experiential Learningのコースをいくつか取ってみて、あれはあれでいいと思うが、あくまで、舞台を用意されて、既に世の中に確立されているdiscipline(経営課題の解決のやり方)を体験学習するというもの。

自分たちで舞台を作って本当にイノベーティブなこと、つまり既存のdisciplineに収まりきらないようなことをしたい学生には如何にも物足りないので、そのような学生のためには、もっと自主研究(Independent Study)の制度に対する支援体制を充実させる必要があると思う。」

 

「私が今学期行っている自主研究は、ブラジルのサンパウロ証券取引所がソーシャルビジネス向け株式市場の創設を企図するにあたり、ゼロベースでその制度設計を行うというもので、どれか一つのdisciplineの領域内に収まらないため、教授たちが敬遠してしまい、指導教授を探すのも難しかった。Finance、Social Enterprise、Business Law、Marketing Researchといった様々な分野の教授の専門知識を活用しなくてはならないが、現在のケロッグではなかなかそのようなことが学生側のイニシアチブでやりやすい体制にはなっていない。

教授も授業や自分の研究などで忙しいのはもちろん承知している。しかし、学生たちからの自由な発想や問題意識から生まれるイニシアチブを活かしたいと考えるなら、教授が授業や自分の研究以外のところで、学生たちの自主研究を支援するために時間を使うことをもっと積極的に評価し、十分なインセンティブをあたえることも考える必要があるのではないか。」

と、(まぁ半分思いつきですが)そんな提言をしました。


 
chopra_s.jpg
当日は欠席していた Curriculum and Teaching担当 副学部長 Sunil Chopra
++++++++++++++++++++++++++

昼食会が終わってからも、この件について私と学部長・副学部長たちとの間でメールが往復していたところ、Dean Jainから「直接会ってもう少し話をしたい」と、冒頭に書いたとおり「呼び出し」が来たというワケです。

学部長という肩書きこそなんだかいかめしいけど、Dean Jainは色々なイベントにも気さくにちょくちょく顔を出す人なので、もちろん何度も会ったことはありますが、彼のオフィスで一対一で会うのはこれが初めて。


30分弱の会談でしたが、

  • 学生の自主研究の指導も、教授たちの評価項目の一つとしてすでに入っているが、彼らの時間の使い方は完全に自己裁量
  • 学部長といえども教授たちの行動をコントロールすることは不可能で、金銭的なインセンティブでもなかなか動かない
  • それでも、学生たちが各々の関心テーマを掘り下げて研究・調査するのをもっと学際的に支援できるような制度が必要ということには同意
  • 現在は、自主研究は一学期に一単位だけしか取れないが、掘り下げたいテーマがある学生向けに、例えば思い切って新たに特別課程を設置し、MBA二年目は複数の指導教授のもとその研究に専念できるようにするのも一案

といったようなことを話し合いました。

会談の最後には、もちろんDean Jainの得意技であるhugも体験して、良い思い出(?)になりました。

 

それにしても、、、自分で言い出しておいて何なんですが、「よくもまぁ多忙きわまる学部長や副学部長達が、一学生にすぎない私の発言をまじめに聞いて対応してくれるよな」と感心しました。

こちらの欲しいものを学校が提供してくれるかどうかを問うのではなく、学生が創り出してしまえる。どんどん自分でアクションを起こして、やりたいことができる環境に作り変えていける。そんな可塑性というか懐の深さがケロッグの最大の魅力です。

それも、こうした学生の意見に正面から向き合う姿勢があってこそ。

ここでは、学生は「お客さん」でも「商品」でもなく、コミュニティを共に発展させていくチームの一員なのです。

ケロッグの良き伝統として、これからもずっと続いて行って欲しいと思います。

 

Chul

トラックバック(0)

このブログ記事を参照しているブログ一覧: Dean Jainとの会談

このブログ記事に対するトラックバックURL: http://www.kelloggalumni.jp/mt/mt-tb.cgi/234

コメントする

このブログ記事について

このページは、Kellogg在校生ブログAdminが2009年3月 9日 23:38に書いたブログ記事です。

ひとつ前のブログ記事は「Party School? (1)」です。

次のブログ記事は「変革のリーダーシップ(Leading Strategic Change Process)」です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。