自分の大好きなものを学べる、ワクワク出来る/楽しい、という軸で言えば、2年間の授業の中で頭抜けて「ハマッた/キタ」授業を今学期は履修している。アメフトの記事でも少しだけ触れた、Sports Marketing and Management。
毎週こんなに授業に出るのが純粋に楽しみな授業は初めてだ。吹雪だろうが38度熱があろうが、這ってでも絶対出たいと素で思えちゃうと言う。毎回世界でも最も進化しているアメリカのプロスポーツの構造や裏事情について学ぶことが出来ると共に、単純にエンターテインメントとしても十分にいけちゃう授業だ。(もちろん、純粋なマーケティング戦略論、メディア戦略論、executionや経営についても、ケースディスカッションや、フレームワークの講義、現場の経験則を通し、がっちり学ぶことが出来るのでご安心を。)
最初に断らせて頂きます。スポーツ好きの方には、少しは楽しんで頂ける記事だと思います。そうじゃなかったら、、、ちょいと引かれるかもです。我こそはという体育会系受験生の皆様、是非KelloggのSports Marketingもご一考下さい。
Honack先生
先生は、Assistant Dean(副学長)の一人で、Marketing系の看板教授の一人、Professor Richard Honack。人格者で話も面白く、皆の人気者。彼自身のバックグラウンドがそもそも強い。彼自身Kelloggの卒業生なのだが、Chicago Sun Times、Chicago Tribuneという中西部を代表する二大新聞の現場のeditorから叩き上げで20年以上のキャリアを積み、マネジメントまで経験している。
その過程で、当時傘下にあったメジャーリーグのChicago Cubsの経営に深く関わって来たらしい。また、90年代にNBAの爆発的な人気に火をつけた、Chicago BullsのJordan -Pippen時代にも大手スポンサー及び提携メディアとして、いろんなマーケティング上の新しい取り組みの立ち上げを助けてきたという経歴の持ち主。そして、彼自身、筋金入りのスポーツヲタク。授業中に語るスポーツウンチクの引き出しが無限大。(授業中も話逸れまくりっちゅう話も...)
華々しいスピーカーたち
従って、彼の持っているシカゴを中心としたプロスポーツ界に広く、深く根を張った人脈が凄い。(要は顔がめっさ広い。)その人脈をフルレバレッジして毎回スピーカーを連れて来るので、なかなか華々しいことになっている。錚々たる顔ぶれ。スピーカーの名前を見るだけで涎が出ちゃいます。
以下、これまでのスピーカーの紹介と、印象に残った話を簡単にご紹介。スポーツ経営やマーケティングの話はもちろん、スポーツの世界でのキャリアの話や、もっと広い意味でのリーダーシップ論や人生論などの話を聞いてます。
(1) 元Chicago BullsのCMO
●現在はスポーツマーケティング会社のCEO。Professor Honackと組んでJordan-Pippen黄金時代の六連覇の裏方を務めた方。現在のNBAの会場のエンターテインメント化の流れはブルズのホームコートであるUnited Centerが震源地と言われている。Tシャツを客席にバズーカ砲でぶち込んだり、ファンに被り物をさせて競争させるイベント、オーロラビジョンでのDunkin Donutsのドーナッツとコーヒーが競争するレース(手元にあるチケットにどちらかが書いてあり、勝った方のチケットを持ってたお客さんはただで貰える仕組み)など、彼らが仕掛け人となったものも多いらしい。とにかく少しでも多く観客を盛り上げ、スポンサーから金を取れる仕組みを作ろうと必死で考えまくったらしい。
●試合の山場が明確なアメフトや、一発逆転が起こりやすい野球に比べ、バスケと言うスポーツの難しさとして、スーパースターがいる時はいいが、彼らがいないと、スポーツとして必ずしも万人受けする魅力的なコンテンツではなくなってしまうと言っていた。目の覚めるようなプレーも無く淡々とコートを往復する人々を見るのは時に苦痛だと。確かに。そりゃそうっすよね。
●"スポーツビジネスの世界は物凄いハードワーキングで地道な仕事が多く、拘束時間も長い上、給料も高くない。でも、そこで働きたいだけのパッションと愛情があれば、最高に幸せでやりがいのある仕事だ。自分が子供の頃から夢見ていた世界に身を置き、本当に大好きなことを仕事に出来る事ほどの幸せは無いよ"

(2) Gatoradeのブランドマネジャー
●日本で言うところのポカリスエットみたいな商品。CAGR15%成長を保ち続けてきたConsumer Marketing 界の文字通りMonster商品。1965年にFlorida大学アメフト部Gatorsの熱射病対策のために研究室で開発された商品(誕生秘話はこちら)。「スポーツ時には積極的に水分を取るべき」という考え方の浸透と共に瞬く間に全国区になり、Jordanをフィーチャーした伝説的標語であるBe Like Mikeで大ブレーク。その後もブランド価値を高め続け、ここ数年の過当競争を勝ち抜いてきた。その辺の歴史や裏にある戦略的意図について語ってくれた。
●カッコいいCMが多いっすよね。ジョーダンの23 vs 39とかもマジしびれます。日本人的には結構抵抗感ある色してますが...あと正にここ数ヶ月間on airされていて全米で「そもそも何のCM?」と噂になっていた、featuring (ラッパーの)Lil Wayneの印象的なCM、"What's G?"の裏話もこっそりしてくれた。(もう一発。こっちはversion 2)
●肝は、時代の変遷に応じて常にfrom scratchでマーケットを新しく定義し、創造し続けること。そこにこそ金脈がある。「最高の効率での水分吸収」→「パフォーマンス強化」→「quenching thirst」→「冬にがぶ飲み」などなど。そして、誰に売るかを明確に知るとともに、誰に売らないか、誰を捨てるかを明確に知ることが鍵だと仰っていた。
(3) New Orleans Saints(NFL/プロアメフト)、及びChicago Shamrox(プロインドアラクロス)の元CMO
●エネルギーとPMA(Positive Mental Attitude)の塊みたいな人。教室中が三時間、彼の発するエネルギーと芸人顔負けの爆笑トークで高いエネルギー値を保ち続けた。高校時代から地元で野球の神童と言われて育つが、大学でまさかの入団試験落ち。そこから気合で這い上がって大学MVPに上り詰める。プロ入りして大活躍、と思いきやどこからも声が掛からず、トライアウトを受けるも、実力は認められるがサイズが足りないという理由で結局落選。地元の高校で教員として過ごす。
●その後何百通と熱い手紙を書き続け、縁あってChicago Stingというサッカーチームの仕事をするようになり、その経験を生かしてCubsに移籍。実力を買われNew Orleans SaintsのCMOに。そこでHurricane Katrinaに遭遇し、スタジアムが大破した状態で全米に散らばったスタッフをかき集め、テキサスの仮オフィスでチームを立て直す。プレーヤーにコント的な役割を演じさせ、彼らの人間味を伝えることでファンに親近感を持たせたり、ファンの間で有名な「FAITH」のCMを企画(万年優勝待ちのチームのファンが待つ待合室という設定。最後に残ったのが二大万年弱小チームのCubsとSaintsというのがアメリカ人的にはウケる)し、弱小チームながら、地元密着型のプロモーションにより成功に導く。
●彼は心に残る多くの人生訓を語ってくれた。"学歴なんて関係ない。才能なんて関係ない。パッションがあって、毎日例えどんな仕事でも楽しんで努力すれば、何だって出来る。毎晩上司に「明日までにやっとけることはありませんか?」って訊きゃいいじゃん。最近の若い子は「これはキャリアステップに繋がらないからやりません」って言うけど。そうじゃない。どんな仕事だって必ずいい経験だ。そして、楽しめばいいじゃん!"
●"最近のファンは残念ながらSportsの本当の面白さを見逃しつつある。残念だ。勝負が付いたと思って最終第四クオーターの途中で席を立って、でも、その直後に逆転が起きたらどうする?逆転は起こらなくても、若手選手の素晴らしいその日のハイライトになるようなダンクシュートが決まったらどうする?Sportsはどんな人気テレビ番組よりもリアルな、世界最高の「リアリティショー」なんだよ?"

(4) Chicago Cubs(メジャーリーグ)の元CEOでChicago Blackhawks(NHL/プロアイスホッケー)の現CEOのJohn McDonohgh
●22年間Cubsで働き、最後はCEOを勤めてきた方。メジャーリーグ界で知らない人はいないという名経営者。100年間タイトルから遠ざかっているにも関わらず、優勝以外の価値をフィーチャーし、チームや選手ではなく、Wrigley Fieldという「球場」をマーケティングし、最高のエンターテインメント空間を作るという画期的な戦略により、Cubsの経営を歴史的成功に導く。
●その後、1年前に、(中日から福留を獲得した後)プロアイスホッケー(NHL)のChicago Blackhawksへの電撃移籍を発表し、世間をあっと言わせる。当初建て直しは不可能と言われたチームをいくつものinnovativeな手法と、イケメンセレブ若手軍団のポジショニングによって子供や女性や若いファンの心を掴むことに成功。一年であっという間に競合スポーツひしめくシカゴの街で人気チームへと成り上がり、チームを優勝候補の一角へと押し上げる。昨年冬に大昔からの伝統だった、Wrigley Fieldでの野外試合、Winter Classicを復活させ、チケット獲得倍率何十倍、テレビ放映ではアイスホッケー全盛期で今よりもチャンネル数が遥かに少なかった74年以来最高の視聴率を獲得する。
●innovativeなマーケティングや経営の打ち手をいくつも生み出す天才発明家でありながら、絶対に現状に満足せずもっと上もっと上をobsessiveに目指し続けるwork ethicsは印象的だった。毎朝4時半に起きてジムで汗を流してから職場に向かう。例え去年より150%客が増えたとしても、それが満席じゃないなら自分は恥ずかしい。例え満席になっても、それが毎日続かないなら自分は最悪に不満だと。
●傾いていたBlackhawksに乗り込み、マネジメントを入れ替え、組織を立て直す話は完全にターンアラウンドマネジメント。古参社員は全員自分が失敗することを望んでいる。最初は会社のことも顧客のことも組織のことも何も分からない。答えは何一つ持ってない。でも、自分には、本質にダイレクトに切り込む"Damn right question"がある。そして、good peopleじゃなく、outstandingly great peopleを連れてきて、彼らを船に乗せさえすれば、絶対に何とかなると仰っていた。
●Innovativeなマーケティング手法を生み出すコツは?との質問に対しては、「トライアルアンドエラー」。試しまくって上手くいくのだけ続けりゃいい。自分もウンコみたいに上手くいかなかったこと何度もあったよと。
と、前半戦終わったところでそんな感じ。
(5) 後半もなかなか面白そうなスピーカーが待っている。
●95年にOhio State大学でHeisman Trophy(大学アメフト年間最優秀選手賞)を獲得した後NFLのルーキーオブザイヤー、4度のオールスター出場を果たし、現在は実業家でありながらスポーツコメンテーター、ついでに現Kellogg Executive MBAコースの生徒でもあるEddie George
●NCAA(大学)バスケの「春のセンバツ」、ハワイのMaui Invitational Tournamentのプロデューサー
●2016年Chicago Olympic CommitteeのCEO
などなど。いやいや。凄いっす。ホントこの授業を受けられただけでもKellogg来た意味有ったんじゃねえかと思えちゃうくらい...
元アスリート&スポーツカルト軍団
あと、もう一つ面白いのが、そもそも授業に出てる学生の顔ぶれ。今回は他の授業と比べてもかなり特殊。バキバキの体育会系。Kelloggでも一番豪快でやんちゃなメンツが集まってるような気がする。教室を見渡すと、パッと見でイカチい男女が多いのに気づく。
多くが大学時代に高い競技レベルでプレーしていた元選手か、狂ったように熱狂的なスポーツファン、加えて、現在ESPNやスポーツマーケティング会社に勤務しているパートタイムプログラムの学生が結構な割合で混ざっている。
(一瞬余談だが、Kelloggの隠れた素晴らしさの一つに、このパートタイムプログラムの存在がある。我々フルタイムの学生向けの授業であっても、授業によっては一定の割合でChicago CampusのパートタイムMBAの学生が参加している。従って、フルタイムに参加している学生とはまた違ったバックグラウンドの、リアルタイムであらゆるビジネスの現場で働いているプロフェッショナルたちと接する機会が存分に持てる。これはどのビジネススクールも判を押した様にアピールしているDiversityに、本当の意味でもう一段の広がりを与えており、自分の価値観や視野を広げる上で間違いなく貢献していると感じる。)
中には、元マイナーリーグ選手や、プロを目指して大学卒業後もトライアウトを受け続けていたが結局夢適わず、一度諦めて就職をしたが、その後マイナーリーグのチームを買収して育成するという新たな夢に駆られ、それを叶える為に経営を学ぶべくKelloggに来たという変り種もいる。
また、MMA(Mixed Martial Arts/総合格闘技)マニアで、UFC(日本では柔道金メダリストの石井慧が参加表明をしたことで一般的にも少しだけ認知された米国の総合格闘技団体。解散前のPRIDEを買ったとこ)や軽量級のWECはもちろん、日本のDream、戦国さらには修斗にも詳しいという格闘技マニアのクラスメート、Johnも当然含まれている。個人的には彼と授業の合間に格闘技談義をするのが至福の時だ...
授業の議論でも、自分の信奉するチームの話になると口角沫を飛ばして熱く語るイっちゃった奴らが多い。スポーツカルトですね、完全に。クラスディスカッション聞いてるだけで何かエンターテイメントとして単純に楽しくなっちゃう授業はいくらKelloggと言えどそうそう無いっす。
当然、実際にスポーツビジネスの世界の最前線で働いているメンバーからいろんな面白い話を聞くことが出来る。印象に残ってる話をご紹介。
●広告やコンテンツのインパクトやROI(Return on Investment)の測定を突き詰めた先に、視聴率や閲読率といった、リーチ/カバレッジだけではなく、実際にそれが各audienceにどれだけの「刺さり方」をしたのかを計るために、視聴者/観戦者の頭に電極を貼り、脳波を測定し(あの画面上で脳みそが赤とか緑とかの色に分かれるやつ)、「感動量」を定量化する試みをESPNがガチで始めてる話
●進化しまくったテレビでのスポーツ放映で、画面上に選手やチームのありとあらゆるrecordやらstatisticsが表示され、解説者が親切にいろんな裏話や戦略の分析をしてくれる状況に慣れてしまった観客たちが、次第に会場でのライブ観戦に物足りなさを感じるというジレンマが加速度的におき始めている。テレビ放映とライブの自社内競合というジレンマ。それに対する一つの答えとして、観客のメガネのグラス上にstatsを表示し、しかもそこに広告も表示させちゃうというtechnologyが実用化に向けて動いているとの話。サイヤ人のスカウターのイメージ。
スポーツビジネスの世界
もうちょい具体的な中身が無いと何のことやら伝わりっこないと思うので、
他にもいくつか面白いと思ったり、なるほどなと思わされたコメントや、プロスポーツを取り巻く環境変化やそこでの経営に関する話をいくつか、触りだけ紹介させて頂こうと思う。バラバラと。余り整理されてなくてごめんなさい。
プロスポーツの歴史
●今でこそ世界でもっとも進んでいるアメリカのスポーツマーケット。その規模も多様性も、競技のレベルの高さも、エンターテイメントとしての成熟度も、ビジネスとしての効率の良さも、全てに於いて、日本しか基準を持っていなかった僕はただただ驚くばかり。でも、アメリカのプロスポーツ「ビジネス」が一気に進化し、花開いたのは実はここ数十年の話。戦前や戦後間もなくは、地味ーでスタジアムも殺伐としてて、スポンサーも少なく、選手も一労働者として働く世界観だった。
それが、ここ数十年で、加速度的にマーケットメカニズムが導入されたことで、ビッグバンの如く急拡大し、多様化していった。
フリーエージェント制度がスポーツビジネスのパラダイムを一変
●フリーエージェントが導入され、コストが青天井になってしまったことがプロスポーツビジネスにおけるゲームのルールを完全に変えてしまった。70年代までの、リーグやチームのオーナーが一番パワーを握っており選手はそこで働く従業員、という仕組みが、フリーエージェント制度の導入に伴い、完全に逆転してしまった。
●スポーツに於ける最大のコストは選手のサラリー。それが選手の「稼ぐ能力」に基づいて、マーケットの中で競りに掛けられることになった。これに伴い、選手の給料はロケットの如く急上昇し、それをカバーするために、より稼げる選手を取るために必死になったチームたちは我先にと新しいrevenue sourceの獲得競争に走った。
●結果として、考え得るありとあらゆる手段を使って金を稼ぐ努力と工夫の競争が起こった。それが現在のスタジアムの複数のオーロラビジョンやら観客席をぐるっと囲む液晶ビジョンやら、ありとあらゆるところにあふれるスポンサーロゴになり、スタジアムの命名権販売に繋がり、放映権獲得につながり、そのためにスポーツのゲームそのものも進化させることになった(ドラフト指名権の分散による戦力均衡/接戦量産や、バスケの3 pointや24秒ルールなど)

「儲けたいなら、絶対にやるな」
●スポーツ経営は、基本的には儲からない。金儲けが主な目的ならば絶対に筋のいいフィールドではない。それでも構わない、という人だけがやるべき。実際にアメリカの多くのプロスポーツチームのオーナーは、スポーツ以外の事業で財を成した人たちが道楽/趣味/情熱でやっているというケースが多い。そこで働く人たちも、決して仕事の質や量、その人の能力からすると他の業界に比べても決して高くない給料で働いている。でもそういうもん。そこで働くことが最高にハッピーで、生きがいだから。逆にそう思えないならば働くべきじゃない。強いて言うならば、唯一儲かるのは、ほんの一握りのスーパースター選手だけ。
●(これはこの授業で聞いた話ではなく、春休みに行ったGIM Europeで出会ったスペインのリーガエスパニョーラのFCバルセロナ〔ロナウジーニョとかメッシのいるあそこ〕の経営者の方が言っていた言葉だが、このテーマにはまるのでドサクサにまぎれて書いちゃいます)プロスポーツチーム経営の最大の問題は、最大のコストである選手のサラリーが、マーケットメカニズムやエコノミクスを無視したところでインフレしてしまっているところ。例えばチェ○シーの大富豪が、「儲けが出るかトントン」を前提とした時にある選手に付けられる高値の限界を遥かに超えた値段で選手を買ってしまう。単純にその選手が大好きだから、欲しいから、そして赤字を出してでも勝ちたいからという理由で。そうなるとそれに引っ張られてマーケットの価格全体が吊り上げられてしまい、誰も利益が出せないという状況になってしまう。
●また、一般の企業経営と異なり、利益や株主価値が数字上最大の目標となる訳ではなく、勝利という、economicsとは別の目標がある。従って、余った利益は全て勝利のために費やされるため、絶対に大儲けは出来ないという構造的な宿命にあるとのこと。
●加えて常にメディアの目にさらされ、失敗すれば吊るし上げられ、実家に脅迫状が送られてくる。本当にスポーツとチームに対する命を懸けても構わないというような情熱と愛情が無いと、この仕事は薦めない、と仰っていた。
●逆に言うと、儲けとしてのベストプラクティスは、(マンUなど一部の異常値的な成功例を除くと)NBAのLA Clippersの様に、人気や成績はいまいちでも、徹底して選手のコストを抑え、そこそこの客の入りと人気でも利益を確保するという戦い方になってしまう。それもなんだかねえ。

スポーツ間の競争激化問題
●今のアメリカでは広くて深いマーケットの土壌と、完全なる自由競争の中、多くのスポーツが乱立し、成長してきた。インドアのアメフトであるアリーナフットボール、Bull RideやSlam Ball、バス釣り、ポーカーやビリヤードといったスポーツですら全国ネットで放映され、それなりの視聴率を確保する世界。結果として、毎日平日の夜ですらテレビを付けると6つのチャンネルで何らかのチャネルでスポーツをやっているという異常な競争を生んでしまった。シーズンが完全に住み分けられていた昔と違い、四大スポーツ(MLB, NFL, NBA, NHL)ですら思いっきりシーズンが被ってしまっている。
●そんな中、忙しい現代人の限られた財布シェアと時間シェアを奪い合うのは極めて難しい戦いに。完全な過当競争。マーケターとしても日々苦しみながら、頭を絞りながら戦っているのが現状。
子供たちのスポーツ離れ問題
●ビデオゲームやインターネットの登場によるライフスタイルの変化に加え、いろんなファクターにより子供たちのスポーツ離れが進んでいる。特に、観戦ではなく、実際にプレーすることが将来の強くて深いファン層を作る上で重要なのだが、そのエントリーポイントが侵食されつつあるという深刻な問題がある
●親の変化の影響もあるとのこと。昔のように、「何でもいいからいろんな好きなスポーツを楽しくやりなよ!」ではなく、「やるならROIの高そうなバスケで」とか、「野球に集中しなさい。バスケなんかやらずに」とか、「ちゃんとキャンプに通って上達しなさい」という行動が増えてきてるとのこと。スパルタですな。結果として、多くの子供がスポーツを楽しめなくなったり、早い段階でバーンアウトするという問題が生じまくっているとのこと。高校や大学まで部活動で多くの子供が比較的ハードにスポーツに参加する日本と違い、意外とアメリカでは一部のスポーツエリートを除き、「普通の高校生/大学生」はスポーツをやっていない。それが長期的にはスポーツ全体のファン層を侵食していくことが危惧されているとのこと。
スーパースター依存のリスクとイメージ問題
●チームをフィーチャーしていた昔と違い、現代は一部のカリスマ選手たちを立てたブランディング戦略を取ることが多い。子供たちやファンは皆一部のセレブ選手たちに憧れ、崇め立てる。
●一方で、Kobe Bryantのレイプ問題や、NBAの乱闘問題、最近で言うと水泳のフェルプスのマリファナやA-Rodのステロイドなど、祀り上げた後にスキャンダルが生じたときのダウンサイドは計り知れない。親からすると、「努力してフェルプスみたいになりなさい」と言ってたのに、思いっきし梯子外されて完全に裏切られた形に。スポンサー側もダイレクトに売上減、イメージダウンの影響を受けることに。
●この点は多くのメディアでも散々議論され続けている。スーパーボウルのMVPが元ドラッグディーラーで、しかも優勝した次の年には銃撃事件で逮捕されるって...それでも子供たちはヒーローとして彼らに憧れ、タトゥーやファッションや喋り方を真似する。ヒーローがロールモデルとして機能していないという現状。
●従って、チームやリーグはもちろん、選手個人をスポンサーする企業は契約時に相当この点を注意するとのこと。また、某チームは、試合後にラスベガスに一泊する旅程があったが、若い選手が一般の方と混ざってお酒を飲むというシチュエーション自体にリスクを感じ、急遽旅程を変更してラスベガスを回避する、などの方策を実際に取っていると言っていた。
●また、スポーツ=スーパースターという図式が余りにも定着し過ぎてしまったため、本来極めて大事な役割を持っている脇役的な選手の価値が全く高まらなかったり(スタメンなのに他のチームのファンは名前一切知りませんとか)、子供たちが余りにもスーパースターを信奉し過ぎるが故に、「僕どうせどんなに努力しても所詮LeBron Jamesになんてなれっこないし。X BoxのゲームでLeBronのプレーやってた方が気持ちいいし」と、憧れる以前にプレーそのもを諦める子供たちも増えているとか。悩ましいっすね。

そういった課題山積のスポーツビジネスの世界で、リーダーとしてどうやって戦っていくべきかを毎回の授業で議論したり、講義を受けたりしている。
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とまあ、そんな感じっす。前半5回の授業を終え、折り返し地点を回った時点でお腹いっぱい。マジでゴチっす。げふっ。個人的にはこういうこと議論し続けられるならもう他は何もいりませんぐらいの。それだけ幸せです、この授業は。まあ、たまにはこういう純粋に楽しい授業もいいかなと。
アメリカに来て、いろんないいところ、悪いところを見てきたが、スポーツに関しては、(もちろんいろんな問題はあるけれど)本当に素晴らしいと思う。純粋に一ファンとしての立場から言わせて頂くと、スポーツの数/種類という懐の深さはもちろん、競技のレベル、エンターテインメントとしての完成度、そこで繰り広げられる人間模様やドラマも、日本で得られたものよりも数段上だと個人的には思う。アメリカにいたいと強く思ってしまう理由の一つだ。
また折を見て別の授業の紹介もぼちぼちして行こうと思います。
IM Class of 09
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