新聞の「顔」

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アメリカに来て一年半、いろんな文化の違いに気付かされ、面白いなーと感じる日々が続いている。超小ネタなんですが、cultural differenceの切り口で、こっちに来て以来ずっと気になってたのが、毎日新聞で見る「顔」。

日本で読んでいた日経新聞、日経ビジネス、ハーバードビジネスレビュー(日本語版)の「ビジネスパーソン三種の神器」をこちらに来て以来Wall Street Journal, Business Week, Harvard Business Review(英語版)という米国仕様に切り替えた。それらのメディアの記事を読んでて、へー、日本と違うよなーと感じているものがある。

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顔写真のセレクションの違い

もちろん、記事の内容も結構違っていて、どっちがいいか悪いかは別として、こっちの方が(というか少なくとも日経対WSJに関しては)、表面的な乾いた事実のdescriptionから一歩深いレベルのインサイト(Why?やSo What?)に敢えて踏み込んで語ろうとしていたり、少しだけ記者自身のstance/意見まで踏み出して語っているのを結構感じる。

でも、記事以外の内容でパッと見明らかに違うよなーと感じるのが、写真。特に、顔写真。

日本の新聞だと、記者会見で普通に淡々と語ってる顔が載ってるケースが多いと記憶しているが、WSJに関しては、かなりスタンスを取って、記事を象徴するような写真をselectしている。

○○社のCEOが昨日の株主総会で利益の80%減を発表しました、みたいなネガティブな記事だと、むぇっちゃくちゃにがーい顔をした写真が載っている。眉間に凄い皺が寄ってたり、目を瞑ってハンカチで汗を拭ってたり、頭抱えてたり。めちゃくちゃションボリしてる絵が多い。

IMG_3757.JPG東京で日経平均が○%下落しました、みたいな記事だと、急降下してる株価チャートの前で「ぬあーーー!!!やってもうたーーー!」とムンクの叫びばりに頭を抱えて髪をかき乱しつつ喘いでる日本人トレーダーの写真だったり。日本のメディアですらこんな酷い顔見たこと無いよって言う。よくそんなん撮れたね...と感心しちゃうような絵も見かける。

別にそういう表情ずっとしてた訳じゃないだろうし、別にその記事のネタが原因でそういう顔したかもわからないけど、そのストーリーを思いっきりサポートしてメッセージをシャープにする写真を意図的に撮って、選んでいるように感じる。

あんたその写真被写体の前で2時間くらい粘って一秒だけそういう顔した瞬間を貰ったでしょ!?っていう。社長だってたまたま原稿を読もうと俯いただけかも知れないし、もしかしたらそのトレーダーだって、「やっべえ!!今日結婚記念日じゃん!!レストランとか何も予約してねえし!カミサンにぶっ飛ばされる!」と思って頭抱えてるだけかも知れないし。

会見やインタビューの時間のうち、80%は普通の表情をしていて、10%はポジティブな表情をしていて、10%はネガティブな顔をしていて、そのうち1%分の時間だけ、物凄い渋い顔をしていたとすると、その1%の、一瞬の表情を一面に持ってきてるような。日本だと週刊現代の目次ページの「鬼姑遂に切れる」とか、「地に墜ちたアイドル」の見出しのとこに載ってるあのヒドイ写真のイメージ。そのたった1%のextremeな表情を記事の顔に持ってくることで、記事の印象が全く違ったものになってしまう。

(もちろん、逆も然りで、「ベンチャーの××社がこの不況の中伸びてます」みたいな記事だと、最新のオフィスで、おしゃれな格好してすんげえ胸張って自信満々な満面の笑みだったり、涼しげな顔してたり。ハッピーそーな写真を意図的に撮って、選んでいるように感じる。)IMG_3734.JPG日本の新聞では比較的neutralな表情をした写真が多かったと記憶している。(ですよね?)その感覚からすると、WSJの写真のセレクションはちょっと「やらせ感がある」が漂うし、わざとらしいと言うか「あからさま過ぎて鼻に付く」と感じられなくもない。

アメリカのメディアのスタイル

そんな事情もあり、特にここのところの新聞の写真は本当に暗い絵のものが多い。夏のリーマンショック以降、毎朝新聞の写真を見る度になんかブルーな気分にさせられ続け、新聞を手に取ることに対してちょっと構えちゃう自分がいる。(特に自分の場合は就職活動中だったので尚更)

写真はあくまで一つの例に過ぎないが、アメリカのメディア全体の傾向/トーンとして、何か一つの大きなトレンドが生じたときに、それを日本以上にそっちの方向に一斉に「煽る」ような動き方をしてるようにも感じる。不況になって以来consumer confidenceがかなり落ち込んで、それがさらに不況の悪化に拍車を掛けているが、こういう「煽り」による影響で必要以上に極端に振れてる面も少なからずあるんじゃないかなと感じた。

僕は個人的に「ダメなところも含めて、メディアでは伝えられないようなリアルを伝えてくれる」本や映画が大好きで、良く読んだり見たりするのだが、まさにアメリカ社会の真実を伝えてくれる本として最近読んだ二冊の本、「超格差社会アメリカの真実」(小林由美)「ルポ貧困大国アメリカ」(堤未果)でもそういったアメリカのメディアの「気持ち悪さ」が指摘されていた。(ちなみにこの二冊、超お勧めです。多くのアメリカ人や何十年もアメリカに住んでいる日本人ですら知らないであろう生々しい現実が解るので...)

仕事のスタイル 

新聞の話とはかなり離れて、超余談だが、、、前職で6年以上働いてきた米系の戦略コンサルティングファームにいた頃、入社以来ずっと「メッセージをシャープに語れ」、「思いっきり明確に右か左かのスタンスを取れ」、「時には大胆な仮説を作れ」、「『面白い』ストーリーを組み立てろ」と教え込まれてきた。口頭でコミュニケーションをとる際も、スライドを使ってプレゼンテーションをする時も、メッセージをexplicitに語り、それをロジック/ファクト/数字でバチッとサポートするという組み立てを骨の髄まで染み込むほど叩き込まれてきた。

人を説得する際や、経営課題を解決する上ではそうやって常に定石や常識を疑い、例え最初は間違っててもいいので一度思いっきりスタンスを取ってぶつける/検証してみる方が結局早く答えに行き着くため、実用的な必然からそうやっていたのだが、よくよく考えるとあれって多分に米国的な文化/考え方の癖に根ざした部分もあるんだろうなーと、ふと思い出した。

あと、単純に、こういう文化的な違い、スタイルの違いって、なんか、面白いっすよね。

IM Class of 09

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このページは、IM Class of 09が2009年2月 2日 10:59に書いたブログ記事です。

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