不況のアメリカで就職活動(2) Corporate Americaの本丸へ

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さて、前回の米国内での就職活動の記事の続編。

グローバルに通用するビジネスパーソン/ビジネスリーダーになりたい、(仮に最終的にはアジアを軸にすることになったとしても少なくとも一度は)米国で経験を積みたい、より厳しい環境で自分を試したい、英語が母国語じゃないからという理由で認められてない状況を覆してやりたい、アメリカ人の一番優秀な奴らと真っ向勝負して勝ちたい、というちょい愚直過ぎな想いに突き動かされ、無謀にも夏以降、派遣元の会社を辞め、歴史的不況という最悪すぎる状況の中、米国企業の米国本社での就職を目指し就職活動をしてきた。

非帰国子女の純ドメ君のくせにアメリカ人と同じ土俵で、文字通りガチでアメリカ人と戦いズタボロになりながら。

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何十通という不採用通知を貰い(一生に貰える不採用通知の9割以上をこの半年で貰ったんじゃないだろうか。不採用通知の企業ごとのトーンの違いについて無駄に語れるようになっちまいました...)、家族も巻き込んで路頭に迷うリスクを抱えながら、一人ハードSM状態でだらだら流血しながら不毛地帯を彷徨った。

100通以上のレジュメやカバーレターを送り、人脈を辿ったり卒業生名簿をめくっていろんな人に電話でコンタクトしてネットワークを作りまくり、説明会に出てリクルーターに名刺を渡し、毎日のように同級生のアメリカ人とケース面接の模擬練習をやり続けた。毎日スーツを着て学校に通い、授業をいくつもブチり(それどころじゃねえし。人生懸かってるし)、一次面接千本ノックをこなし、最終面接でほぼ毎週米国各地に飛び回り、心身共に疲れ果て、その挙句「大変残念ながら...」のメールや電話を貰い続け、何度も凹まされた。

去年以前の環境だったとしてもかなり苦戦していたはずだが、今年は更に完全に別世界、別のゲームになってしまった。 そもそも企業側の採用自体が無くなっていくんだからどうしようもない。自分の実力や経験の勝負になる以前の問題。土俵に上がって試合をする前に、目の前で土俵自体がどんどん消えていった。かろうじて残った1つか2つの座席でも、結局最後にオファーを貰っていたのは、そのものズバリの業界/ファンクションで長年経験を積んでいる、誰もが納得するようなピカピカに優秀なアメリカ人だった。(例年であればトップコンサルティングファームやPEでドラフト一巡目指名されるような人材が、1、2ランク下のファームや事業会社で辛うじてオファーを貰うようなイメージ)

IMG_3795.JPG(毎日イライラそわそわしてる僕と妻の緊張感とストレスが伝わってか、犬のCameron
精神的に不安定になり、トイレ以外でオシッコをするようになるという二次被害も発生した)

終戦

行けると思っていたいくつかの企業が立て続けに今年のオファー凍結をアナウンスし、今回ばかりは流石にもう駄目なのかも、と思った矢先、最後の最後で幸いなことに運と縁に恵まれ、クリスマスを目前にして、第一志望として狙っていたグローバル企業の米国本社での幹部候補生育成プログラムから奇跡的にオファーを頂く事が出来た。 

道中何度も心が折れそうになりながら(というか何度も実際にポッキリ折れて)立ち上がり、信じて頑張った甲斐があった。

今になって振り返ると、Kelloggに来てからの最初の一年間では学ぶことが出来なかった多くのことを学び、自分自身が大きく変化/成長した半年間だった。アメリカ人の中に入って就活をやることで初めて米国の企業やビジネス、職業観やジョブマーケットについてもう一歩深いレベルで肌感覚で学ぶことが出来た。(現実的な話、端的に変化したものの一つは、英語力。人生を掛けて自分を売り込むというのは学校で議論するのとは全く違ったレベルでの成長をもたらした。)本ブログで少しずつその辺の様子、そこでの学びを伝えさせて頂ければと思う。

IMG_3890.JPG(各社の位置関係やエリア別の産業/マーケット構造、出身地/スポーツの話題に最低限対応
できるよう、机の前に米国地図を貼り時々眺める日々。中学生の地理を思い出しました...)

ますます厳しさを増すビジネススクールの就職戦線

年が明けて新学期が始まり、2年生の就職活動が再開された。連日何千人規模のlay offが発表され続けている。今日付けのWall Street Journalでは1月だけで米国内で60万人が解雇されたと報じられている。60万人て...引き続きMBAのジョブマーケットもガチガチの超氷河期。就職課のカウンセラー曰く、「自分の十年以上のキャリアの中でもここまでの酷さは経験したこと無い」。サイヤ人来襲時にナッパが「クンッ」で街を破壊しちゃった後の、ペンペン草も生えない焼け野原な状況が続いている。

卒業まで5ヶ月を切り、苦しい環境の中引き続き就職活動を続けている仲間も多い。引き続き学校からメンタルカウンセラーの紹介メールが送られ、就職課(Career Management Center〔CMC〕)でも今年は例年には無い「第一志望業界を諦めて第二、第三志望へ切り替える際の注意点」とか、「不況でも採用しそうな業界特集」とか「人脈をたぐって自力で仕事を見つけてドアをこじ開ける法」みたいなセミナーを立て続けにやっている。

その中で、「Recruiting Re-Launch for 2nd Year(2年生の就活再開)」というセミナーのビデオをオンラインで見た。CMCの見積もりでは、現時点で約700人いる2年生のうち200人近い2年生がオファーを持っていない状況らしい。企業が学校に来てくれ、一連の定型化されたプロセスの中でベルトコンベヤー的にまとめて採用を行う「on campus recruiting」は年内に全て終わってしまったので、後は基本的にCMCのウェブサイト上に時々掲示される突発的なjob postingや、自力で地道に人脈を頼って開拓するゲリラ戦でしか仕事を得ることは出来ない。

ここから卒業までの間に、もしくは卒業してからもこの状況の中仕事を探し続けなくてはいけない状況だ。昨年の例だと年明けから卒業の間に出たオファーは100件ちょっとなので、今年の死滅したマーケットを考えると、単純計算でも残った200人のうち恐らくかなりの数の学生が卒業までに仕事を見つけられないということになる。一体どうなっちゃうんだろか。

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Kelloggの最大の就職先である大手コンサルティングファームも軒並み稼働率が低下し、どこも今年はフルタイム(インターン以外)でのオファーはほとんど出ていないと聞く。いくつかのファームでは最終面接自体をキャンセルしたり、オファーを出した数人に対しても「卒業から半年-1年後からの勤務開始(景気が回復して稼働率が上がるまで待ってね♪)」を条件に追加したりしているらしい。

悲しい話だが、秋の頃に第一志望に内定を貰ったと笑顔で語っていた同級生の友人が内定を取り消されたという話も聞いた。彼らだって入学する前や1年生のころは、名門ビジネススクールに入れば、まあ、仕事に困ることは無いでしょ、と思ってただろうし、まさかこんな状況に置かれるとは思っていなかったと思う。それくらい、厳しい状況だ。

(ちょうど2月10日付のWall Street JournalでもBusiness Schoolのリクルーティングが死滅してるという記事が載っていた。どこのトップスクールも就職できないアメリカ人に溢れ、特にinternational studentは文字通り壊滅的とのこと。)

(そんな中でもhumorを忘れない学生たちは、普段は笑顔を絶やさず、おバカビデオでも見て元気出そうぜ、なんて励ましあっている。)

IMG_5972.jpgKelloggのresilience

(こんなこと書くとまた自画自賛に聞こえるので嫌なのだが)それでもまだ幸いなことに、Kelloggはビジネススクールの中でも最も「マシな」と言うか、ダメージの小さい学校の一つだと思われる。

(1)ブランド:(別にランキングが本質的に重要で絶対的な指標だとは決して思わないが、現実問題として米国内で社会的に浸透してしまっている)Business Schoolランキングで長期的にトップクラスの評価を受けてきたブランドとネットワークがやはり大きなアドバンテージの一つになっている。

(2)就職職先の多様性:また、元々卒業後の就職先に占める金融比率が相対的に低く(例年約20%)、且つ事業会社やノンプロフィットに行く人も多い。投資銀行、PE/ヘッジファンドでのオファーが限りなくゼロに近い今年の状況ではこれはかなりダメージを軽減してくれている。

(3)General Managementと人間力:加えて、メディア等でもよく書かれているように、General Management教育に強く、Team Workに優れた、well-roundedな(バランスの取れた)卒業生を輩出すると定評のあるKelloggの校風は採用企業からすると「将来組織内で成功する可能性の高い」(別の言い方をすると、「ハズレの少ない/リスクの低い」)学校に映るらしく、採用担当者からの評価も高いらしい。実際に何人かの面接官から「君はKelloggだから皆と上手くやっていく力や人脈構築力、インターパーソナルスキルは問題無いね」といったコメントをろくに話す前から頂いたりもした。『Kellogg=バランスと人間力』のブランド認知は採用の現場レベルで相当広く行き渡っていると感じた。

IMG_5973.jpg(4)結果としての、採用企業内での高いレピュテーション:従って多くの企業にとって採用のターゲットスクールの中でも特に高い優先順位を置かれることが多く、結果、学校に採用に来ている会社の数が他校に比べて多くなり、その種類も多様なため、採用企業の「懐が深い」。

(特に事業会社でその傾向が強い。必ずしも上位校であればいいという訳でもなく、一部のトップスクールでは金融/プロフェッショナル志向が強すぎ、カルチャーのフィットや期待給与レベルで折り合いが付かないケースが多いため、敢えて採用プールから外す企業もある。)

(5)Location:加えて、極めてPracticalながら重要な話なのだが、産業ポートフォリオが多様な中西部(ミネソタ、テキサスも射程圏内)にあり、Chicagoの街に物理的に近く、そこで独占的とも言えるブランドを確立しているのは、オフキャンパスが主戦場となる状況ではクリティカルに効いて来る。「明日サクッと会わせて下さい」が使える。街まで遠い場所にある学校や、業界が傷んでいてダイナミックに採用を減らす傾向にあるハイテクに強い西海岸、学校間の競合が激しいボストン/ニューヨークに比べ、相対的にお得なポジションにあるというファクターが地味に効いている。

これは実際の当事者ではないのであくまで想像だが、例年金融プロフェッショナルへの就職率が高い学校や、(別にランキングで学校の価値が決まるわけでは決して無いが)ランキング中位、低位の学校はさらに酷い状況にあるんじゃないだろうか。いくつかのコンサルティングファームでは今年のインターン向けの説明会を実施する対象校のうち、2nd tier, 3rd tierの学校での予定をキャンセルし、上位校のみに絞っていると聴く。厳しい時ほどこういう生々しい現実が突きつけられる。(企業からすると当然のbusiness logicだが)

IMG_3754.JPGCorporate Americaの本丸へ

前回の記事を書いてから、ブログを読んでくれていた知人の何人かから「大丈夫?」と声を掛けて頂いた。心配させてしまい大変申し訳無かったのだが、冒頭にも書いた通り、幸いなことに、冬休み前の時点で、狙いを定めていた第一志望、某Fortune 100のグローバル企業の東海岸にある本社での幹部養成プログラムからオファーを頂く事が出来、サインをさせて頂いた。創業から100年以上の長い歴史を持つ伝統的名門企業/excellent companyで、アメリカの発展と危機の歴史と共に進化し続けてきた、所謂「Corporate America」のど本流。授業でも近代的経営・組織の先駆け、イノベーションマネジメントの事例としてケースや教科書で時々お目にかかる企業でもある。

数あるリーダーシップ育成プログラムの中でも、最もセレクティブ(10人未満)でメンツがかなり強力だったこと、育成の仕組みが圧倒的にしっかりしていたこと、極めてglobalityが高く事業部によってはアジア人や日本人がグローバルのリーダーシップを取っていること、プログラムがCEOやCMO直轄でtop managementへのexposureと彼らからのcommitmentが厚かったことなどから、当初から高いpriorityを置いていた。

また、面接で10人以上と話す中で「この人達なら信じられる」と思えたことや、質問されたことの9割が「人間力」や「リーダーシップ」の話だったこと(戦略やマーケティングといったハードスキルではなく)からも解るように、会社として本気で次世代の経営幹部を育成しようというコミットメントと情熱が感じられたことが決め手となった。

あとはちょっとだけ戦略的な話、CEOとプログラム責任者が共にKellogg出身(しかも同級生で仲良し)で、Kellogg chain(閥)が鬼レバレッジできそうだったこと、明確にKellogg生を採って育てたいという狙いがあったという事情もあった。(ちなみにKelloggからは僕ともう一人Wall Streetのバンカー出身のアメリカ人生徒会長の2人が入社するとのこと。彼がこれまたKellogg魂を絵に描いたような恐ろしくナイスで優秀な奴だったりする。)

新しいフィールドで再出発

(あくまで現時点での仮説だが)暫くは米国のHeadquarterで経験を積み、出来るだけ実績と人脈を築き、最終的には恐らくアジアを軸に経営ポジションを目指していくというキャリアパスで当分は行ける所まで突っ走ってみようと思う。

これまでの20代はBCG(ボストンコンサルティンググループ)で戦略コンサルティングの仕事を通じ、経営者視点での戦略立案や問題解決といった「知恵/知識(IQサイド)」の鍛錬にフォーカスしてきたので、これから迎える30代では、大企業のグローバル経営や危機管理、politicsついて学びつつ、「現場で実行し結果を出し切る力」、(特にmulticulturalな状況での)「人を動かす力/人間力(EQサイド)」の研鑽に捧げて行こうと思う。(ま、こういう時代なので、uncontrollableなファクターも多すぎて、実際どうなるかは全く分かりませんが...卒業までに会社が潰れたり内定取り消しになる可能性もゼロじゃないし。)

 

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(その後無事メンタルの安定を取り戻したCameron。外に出たい出たいとうるさいので
出してやったら雪の冷たさに日和ってめっちゃ背中丸めて逃げ帰る)

体験記

前回の記事にも書かせて頂いたが、僕個人の想いとしては、より多くの優秀で尖った日本人MBAの方が、短期的にせよ長期的にせよ早いタイミングで海外でガチで経験を積み、グローバルに戦えるリーダーの層を分厚くすることが日本の将来のために必要不可欠だと信じていることもあり、今後米国で就職活動される方のお役に少しでも立てればという想いから、自分の就職活動からの学びと反省、そこからのimplicationを書かせて頂こうと思う。

結論から言うと、もちろん、物凄く大変だった。10回リセットボタンを押して戦っても、恐らく勝てたのは5回未満だったんじゃないかと、今回ばかりは思う。想定外に刺激的な茨の道体験だった。それでも尚、例えMBAが初めての海外経験だったとしても、「しっかりと情報収集して、戦略を練って、正しく努力すれば、アメリカでの就職は不可能ではない」と思った。今回の経験を通じ、「これはやってよかった」、「もっとこうしておけばよかったな」という点もいくつか見つかった。

てな訳で、次回と次々回の2回に分け、もうちょい突っ込んで、日本人のアメリカでの就職活動の難しさとその裏にあるメカニズム、そしてその中で成功するためにはどう戦うべきかを書かせて頂こうと思う。

(またしても、ハードコアな帰国子女や米国のアングラ(undergrad)出身の日本人、グリーンカードを持ってる方からすると、「んなことワザワザ語るまでも無いっしょ。何必死になっちゃってんの。普通にやりゃいいのよ普通に」って話かも知れませぬが、いや、こっちは必死なんす...そして、純ドメの気合入った尖った人たちが超苦労して出て行くことにこそ価値があると個人的に信じてるんす。)

ロンハーばりに引っ張りまくって一向に本題に入って行かずごめんなさい...次回以降、就活の中身を語らせて頂きます。次回の記事はこちら

IM Class of 2009

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続報。

その後も米国のジョブマーケットはますます厳しさを増している。本日(09年4月21日)付のWall Street JournalのPersonal JournalにMBAの就活の記事が載っていた。
http://online.wsj.com/article/SB124026550135236597.html

多くの学生が仕事を見つけられず、MBAに来る前の職場/業界に戻る学生も多いという。状況が状況故決してpickyにはなれないが、それでも07年夏の入学時には夢に溢れ、キャリアチェンジをしたくてMBAに来た人も多いはずで、胸中は複雑だろう。

それでも働く場所があるだけまだ恵まれている。現時点でKelloggの2年生700人のうち、約3割が職無しの状況。卒業まで1ヶ月なので、恐らくそのまま卒業することになると思う。運よくオファーを貰えたものの中にもキャンセルされたり、就業を半年近く遅らせられたりしている。中には社費派遣で送られてきたのに、本国のオフィスから卒業後しばらく復職を控えるよう指示されているファームもあるという。それまでのキャッシュフローが厳しいと嘆く同級生もちらほら。

先日WhartonやBoothの同級生と話す機会があったが、金融ヘビーな両校はさらに厳しい模様。

一方、日本人留学生に関しては、Kelloggの2年生は皆無事卒業後の進路を確保した様子。MBAの人数が圧倒的に少なく、採用市場の需給バランスやメカニズムが異なるため、日本で職を探すのであれば、ある程度の妥協は否めないものの、米国ほどの悲壮感は感じない。

ただ、やはり進路のポートフォリオには大きな変化が見られ、約半分を占める社費組は、現時点では1名を除いて全員帰任。私費組も、投資銀行/PEはゼロ(オファーを受けても断っている)で、事業会社の比率が例年に比べて高い。

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このページは、IM Class of 09が2009年2月 7日 17:51に書いたブログ記事です。

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