先日KelloggのStudent Life Office(生活課)のDirectorで、Kellogg生にとっての「綺麗で優しい皆のおかん」みたいな存在のFranと生徒数人で食事をしながら話をする機会があった。
自身がKelloggの卒業生でもある彼女に、いつも本能的に綺麗な女性の隣を秒速ゲットする野生の習性を持つ同級生のHさんが、いつものBritish訛りの英語で「昔と比べてKelloggの学生の生活って何が一番変わりましたか?」というニクい質問をしていた。
「そうねー。やっぱりNotebook(PC)の導入によるコミュニケーションのメディアの変化かなー」と言っていた。今は先生と生徒間での連絡はもちろん、学校からの連絡、クラブのMLやイベントの告知といったコミュニケーションの全てが当然のようにメールで行われている。彼女曰く、昔はその全てが紙ベースで行われており、毎日何十枚ものメモランダムやビラがメールボックスに配布され、数日放置すると溢れていたとのことだ。恐ろしい...てか紙が勿体ねえし...
ゲストスピーチのビデオ配信
PCによって快適になった面は数え切れず、僕が個人的にその中でもかなり大きなメリットを享受しているのは、ゲストスピーカーの講演のビデオ配信だ。
以前スピーカーの記事でも書いたが、僕は個人的にゲストスピーカーによる講演が大好きだ。外の世界の生の情報、一流のリーダーたちの凝縮されたメッセージやストーリーが心に刺さり、大きな学びを残していく。以前も書いたが、平均的な授業よりも遥かに学びがあると信じているし、授業の選択でも魅力的なスピーカーが多数訪れる授業を最優先で取っている。
一方での問題は、時間と場所の制約だ。いくつかのスピーカーがバッティングしたり、授業と重なったりなんてことはしょっちゅう起こる。雪が降りしきる日にそのためだけに学校に行くのはぶっちゃけめんどっちかったりもする。で、悩んだ挙句出なかったりすると、友達が「あの講演すっげえ良かったよ!」何て言ってて、めっちゃ凹んだりする。
そしてなんと言っても一番辛いのは、いざ出てみたはいいが、イマイチなことが判明してしまった時だ。大体始まって最初の5分でそれは判明してしまうのだが、稀に、ビックリするくらい話が下手な方だったり、自分の興味のスコープにかすりもしない内容だったり、つまらなかったり、学びが少ない講演に遭遇してしまうことがある(なんて失礼なこと偉そうに言う権利無いですね。ゴメンナサイ...でも本音なんす...)。礼儀上、ルール上、講演の途中で退席することは許されない。なので、後ろの方の席でメモを取る振りをしつつ、ノートに向かって自省/思索モードに入って時間を潰すしかない。
一年ほど前、そんな不便さを全てスカッと気持ちよく解決してくれるツールがあることに気づいた。
学生向けのイントラサイトで、主要スピーカーのスピーチのビデオをストリーミングで見ることが出来たのだ。(つか何でそれまで気づいてなかったんだっちゅうくらい初歩的な話なんですが)それ以来、ビデオで配信されそうなスピーチは一切出席しないで後から家でビデオでまったり見るという方針に切り替えた。これなら、ベッドやソファーでも見れるし、聞き取れなかったりメモ書きが間に合わなかった場合は一時停止すればいいし、重要度の低い箇所は飛ばせるし、そもそもつまらなかったり役に立たなそうであれば途中で見るのをやめればいい。inspirationalだったり本質的な学びをremindしてくれるような素晴らしい講演については何度も聴き直せる。ホントいいこと尽くし。
これって卒業生でも見られるのかな?そうだとしたら恐らく卒業後も世界の最前線と繋がっていられる素晴らしいツールになると思う。
昨年の卒業式で
さて、その中で、最近ビデオ聴講したスピーチの中で、深く心に響いたスピーチがあった。昨年6月に行われた、Class of 08(去年の2年生)の卒業式での、GEのCEOであるJeff Immeltのスピーチだ。
誰もが認める優良企業でリーダーシップ輩出企業No. 1でもあるGEのトップに立つ人だけあって、素晴らしいスピーチだった。存在感、オーラが違う。人を元気にさせる陽気な声とパワーで快活に話す。話もむちゃくちゃ上手い。頭が柔らかくて回転が速いのが伝わってくる。限られた時間の中で笑わせ、泣かせ、腹落ちさせ、最後は沸かせる。彼のその話す力、人の心を掴む力に素直に感動してしまった。こういう世界の一流のリーダーたちとの出会いがMBAの醍醐味の一つだと改めて実感させられた。(彼自身に関しては最近のGEの業績悪化により、そろそろ退任かという声も聞こえ始めてますが...)
が、それはさて置き大事なのは中身。これまで自分がKelloggで感じてきたこと、就職活動のプロセスを通じて思って来た事にかなり近い、相当共感出来る内容だった。彼の話を聞いてて、「そうなんだよ!」とか「ですよねーーー!」と何度も叫んで奥さんに「うっさい」と部屋のドアを閉められた。これからKelloggを卒業し、新しい世界へと踏み出そうとしている自分にとって、「これ、俺のために言ってくれてんじゃね?」と一瞬錯覚しちゃうくらい心にぶっ刺さる内容だった。
Immeltのスピーチ
当然のことながら一語一句紹介することは出来ないが、ポイントだけ掻い摘んで、あくまで僕の主観的解釈というフィルターを通しての内容だが、簡単に紹介させて頂こうと思う。( )内は僕個人の感想です。
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"皆さん、卒業おめでとう。今、世の中は物凄い勢いで変化し、極めてチャレンジングな状況にある。このタイミングで卒業するあなたたちは、「やっべ、まずいタイミングで卒業することになっちゃったな・・・」と凹んでるんじゃないか。ちなみに自分がMBAを卒業した82年も、GDP成長率マイナス2%で失業率12%という最悪の時期だった。それでも世の中は変化し、チャンスは訪れた。良いときもあれば悪いときもある。"
"MBAは、それ自体で完結した学びじゃない。あなたたちがこれからの長い人生で一生を掛けて学び続けるための、いろんな色を塗るための、"塗り絵の枠組み(Frame of Learning)"なんだよ。"
(→本当にその通りだと思った。遥かに大事なのは、卒業してからどれだけ学び、成長できるかだよねと。MBAでの経験は、その学びをより豊かで深いものにしてくれるひとつの切符に過ぎないんだよねと。)
"安心しなさい。MBA、経営/ビジネスには、賞味期限(shelf life)が無い。コンピューターサイエンスやバイオや医薬と言った他の多くの学問では、残念ながら明確なshelf lifeがある。一度学んだものも時間が立てば廃れてしまう。でも、経営やビジネスの本質は普遍だ。"
(→これも強く共感する。これは、別に戦略論の最新のフレームワークや、マーケティングやファイナンスの流行の手法といったテクニカルな知識の話をしているんじゃない。その根元の部分にあるビジネスの本質となる考え方、そして何と言っても、企業/組織の根底にある、人、それを支えるリーダーシップ。そういう本質は仰るとおり歴史を越える普遍的な存在だと思う。)
"卒業するあなた達に、私からこれから述べる「10のレッスン」を送らせて下さい。
1.これが10個の中でも一番大事。一番の本質。You really have to love and respect people. 人だよと。人に始まり人に終わるよと。自分もビジネススクール時代は、Organizational Behaviorのコースなんてマジうっぜーと思ってた。ソフト過ぎてわかんねえよと。もっとハードスキルを教えてくれよと。でも、卒業して、自分がリーダーの立場になって思うことは、そんなハードスキルなんかじゃなく、こういう『人』のことをこそ、もっとちゃんと学んでおけば良かったという事。人が全てだったってこと。人々の心をMissionやValueで動かすこと。これが本質だ。
(→正に自分がKelloggで得た(知識として新しく知った、ってことじゃなく、心のレベルで腹落ちした/実感したって意味での)最大の学びはこれだ。一番重要なのは、表面的でテクニカルなことじゃ絶対にない。(もちろん、テクニカルなのも「も」大事だが)本質は「人」以外の何物でも無いし、それを動かすvalueこそがリーダーシップの本質だと思う。)
2.目の前の些細に見える仕事をしっかりとこなしなさい。大事にしなさい
自分はMBAを出た直後に、「とっととシニアマネジメントになってやる」と思って意気込んでいた。そんな中で任命された仕事は一介のマイナー商品のセールスマンだった。その後は(80年代後半の)中国で30都市を回って生産を管理する仕事。当時は、何で俺みたいな優秀な奴がこんなくだらない仕事しなくちゃいけないんだ?俺は干されてるのか?と思った。俺はもっとメインストリームで人を引っ張るためにMBAに行ったのにと。
でも。今CEOになって振り返ると、その時の経験こそが自分自身の土台として物凄く生きている。あの経験が無かったら今の自分は無いと思う。
あなたがこれからのキャリアでどこに行こうとも、「くだらねえ仕事」「ちっちゃいこと」こそが、将来のリーダーとしてのあなたを作り上げるんだ。だから、誰も見てないような小さなことを、一生懸命やりなさい。その積み重ねは必ずあなたを素晴らしいリーダーへと導いてくれるから。
(→自分にとっては本当に胸に響く言葉だ。これから卒業して暫くして、彼が卒業後に感じたのと同じような気持ちになるかも知れない。その度にこの言葉を思い出して、焦らず、じっくりと、一歩一歩、寄り道や回り道をしながら、前を見て進んで行こうと思う。)
3.常に最前線に立って人々をぐいぐい引っ張っていけ
人々は常にリードされることを望んでいる。フロントラインに立って、自ら意思決定をしろ。失敗なんていくらしたっていい。リードする強い意思を持ちなさい。
4.Stay on the leading edge of globalization
自明だろ?アメリカや、日本やヨーロッパと言った先進国よりも、その外の国々の方が遥かに速い速度で成長する。今のあなた達にとって、グローバルリーダーになることは、選択肢ではなくて、必須条件なんだよ。
(→これは微塵も疑うことなくその通りだと思う。Kelloggに来て一年半で自分が得た最大の学びの一つが、この点に関するリアリティと、重要性と緊急性の高さだ。特に、日本人に取っては更に当て嵌まるんじゃないかと思う。そして、そういや同じくGEの日本のトップの藤森さんも似たようなことを言ってたなと思い出した。)
5.Stay on the leading edge of technology
各分野の技術は物凄いスピードで進化し、あらゆる場面に入り込み、それは経営にとって欠くことのできないものになっている。決して目を背けることなく、最先端の技術を学び、理解し続けなさい。
6.Stay on the leading edge of social policy
かつて無いほど、政府や社会とどう関わるかが極めて重要になっている。あなた自身やあなたの企業がどういうsocial impactを生み出せるかこそが本質だ。
7.Stay on the leading edge of thought
どんなに歳を取っても、若い人たちに何を考えているかを聞き続けなさい。アクション/現場に最も近い位置にいる人々からアイデアや思考を貰い続けなさい。そして考え続けること。
8.Enjoy each step!
自分はGEのキャリアの中で、8回も引っ越した。それを嫌だなーと思いながらやる人もいる。「やった!新しい環境だ!新しいチャレンジだ!」と楽しめる人もいる。人生は長いマラソンのようなものだよ。好きなことをやりなさい。そしてそのプロセスを思いっ切り楽しみなさい。
(→はい!そうします!)
9.失敗すること
失敗だけがあなたの揺らがぬ自信と信念を作り出すための唯一の方法。顔面にパンチを喰らってKOされてもゾンビみたいに何度も復活する事が非常に大事なリーダーの条件。それが出来れば必ず成功できるよ。
10.Optimisticであること
Authenticity(偽らずに自分自身でいること)、desire to be yourself。みんなから見て常にtransparentであること。そして、Optimisticであること。
最後に...、
あなたたちは、「ビジネスリーダーの旅」という、人生でも最高に素晴らしい旅へと旅立つチケットを持ってるんだよ。あなたが成し遂げたいことや夢のほとんどは、やり方次第で、本当に成し遂げることが出来るんだ。自分が人生で何をやりたいかをきちんと考えて、しっかりと道を歩んでください。卒業おめでとう。"
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いや、改めてこうやって書いてみて、また痺れました。鳥肌立ちました。すげえスピーチですわ。ホントに。今までKelloggに来て聴いた中でも間違いなくトップクラス。本質的で心に染み渡る。これからの人生/キャリアで迷ったときは何度もここに帰ってきて読み直そうと思う。(ごめんなさい。読み手の皆さんに伝わってないのは100パー僕の文筆力の無さが原因です...)
結局、卒業して5年、10年、20年経って、自分のMBA留学の2年間を振り返ったとき、本当に記憶に残っているもの、役に立ったと思えるものって、テクニカルな話なんかほんっっとどうでも良くて、こういう本質的な話なんじゃないかと思う。個人的には。
しっかし、これだけ本質的なことを、凝縮した形で、自分自身の経験と信念に基づいて、これだけ心の深い部分に届く形で話せる人って、一体どれだけいるんだろうか。いつかこういうカッコいい人になりたいなと心から思わされる、「憧れエンジン」がゴリっと掛かる瞬間だ。
今年の卒業式のスピーチは誰なんだろう。今からちょいドキドキ。
しかし、このスピーチも本来であれば去年の卒業生しか聴けてなかったはずな訳で。これもKelloggがスピーカーのビデオストリーミングの仕組みを始めてくれたお陰です。いや、ほんとテクノロジーにありとぅーっす。
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追伸
と、いう記事をアップしたらその10分後に記事を読んでくれた同級生のNさんから、「そもそもスピーカーの動画って一般の人も見られるはずだよ」とのこと!なぬーっ!?そうだったんすか。素晴らしいですね。それは。てなわけで早速リンク先をご紹介。こちらをクリックして頂くといろいろ見られます(はずです。)。ちなみに最近見て印象に残ってるのは、, Carlyle Groupの創業者で現経営陣のDavid Rubenstein氏の「やっぱ世の中銭『じゃない』ずら(松山ケンイチ風)」発言。
IM Class of 09
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