前回の記事の続編。Kraemer氏のManagerial Leadership。
彼の授業がどんな感じなのか、あくまで「個人の印象/感想」ということで伝えさせて頂こうと思う。(学校のルール上、残念ながら授業の内容そのものをこの場でダイレクトに公開することが禁じられているため、多少間接的になってしまっていると思います。どうかご理解頂けると幸いです。なんとか雰囲気だけでもお伝えできれば幸いです。)
全体としては、大きく8つのテーマを扱っていく。初回の授業で彼が紹介した、リーダーシップの資質の大きな8つの塊(彼の表現では、eight foundation bricks of value based leadership)、を一回の授業で一つずつカバーしていく。
8つの要素とは具体的には、
1.Valueに軸足を置いてリードする
2.リーダーと才能の育成
3.組織の大きな方向付け
4.Effective communication
5.動機付け
6.戦略の遂行
7.危機と変化
8.社会的責任
の8つ。
授業は毎週一回、3時間一本勝負。3時間の中は基本的には二本立て。前半の1時間半にHarryが自らの体験、意見を元に一つの授業につき一つのBrickに関して語り、さらに学生たちからの質問に答えていく。そして、10分の休憩を挟んで後半の1.5時間はゲストスピーカーの話。彼らの体験をベースに、リーダーシップについてのレッスンを学生たちに語ってくれる。これも最後の30分は学生との問答。
心に残ったメッセージ
以下、どんな内容が僕的に心に刺さったのか、順番や整理は多少ボロボロでも、感じだけでもお伝えできるよう、自分のノートを見直しながら、記憶を辿りながら、ざっと紹介させて頂こうと思う。
一つ、最初にお断りさせて頂きたいのだが、こうやって文章に書いてしまうと、非常にサラッとしているし、読まれた時点で、「え?なんか、普通のこと言ってない?」と感じられるかも知れない。確かに仰るとおり、言っている事の字面は、普通の事で、なんら突飛なことを言ってるわけではない。なんだが、やはりそれが本質なんだと思うのと、これを、彼自身の経験やエピソードを元に、彼自身の口から聞くというのは、説得力や心への浸透力がかなり違ったことになってくると感じている。(とこれまた文章でお伝えした所で限界あるんですが。。。)
最初の授業で、この授業の全体像を語り、リーダーシップの全体像を語った。そこでのHarryの話。
"リーダーシップを培うというプロセスは、その人の人間としての深い部分に直接関わる極めてパーソナルなものだ。また、そのプロセスは一生掛けてゆっくりゆっくり歩いていく、長い旅のようなものだ。そして、私はリーダーシップとは生まれつき備わっているものではなく、身に付けるものであって、誰もが素晴らしいリーダーになることが出来ると強く信じる。"
"リーダーシップを培う上で極めて重要なのは、自省(Self reflection)のプロセス。自分がリーダーとしてどう行動するべきか、何が強みで何が弱みか、どうやって成長するべきか、どういうリーダーになりたいのかを日常的に考え続け、自分と会話し続けなさい。ノートに書くでもいいし、PCに打つでも構わない。日常的な習慣としてそのプロセスを組み込むこと。"
"人生やキャリアに於けるメンターは極めて貴重な存在。あなたたちが優れたリーダーに育っていく上で欠くことのできない存在。コツは、メンターは何人いてもいいということ。20人、30人いてもいい。同期だって構わない。必要な部分を主体的にチェリーピックすること。そして、忘れてはならないのは、どのメンターもバイアスを持っているということ。それを意識した上でメンターを生かしなさい。"
「なぜあなたはあれだけの企業のCEOになれたんですか?」という質問に対して。
"具体的なリーダーシップ/マネジメントポジションに着くかいなか、ということに関しては、正直、自分ではコントロールできない運のファクターが大きいと思う。「right timeにright placeにいるか」という要素。ただ、そういう時に選ばれ得る、リーダーシップのある人間になるか否かという部分はコントロールできるし、また、必ずしもそういうポジションに付かなくても優れたリーダーになり、組織や世の中に対してポジティブなインパクトを与えるリーダーシップを発揮していくことは出来る。リーダーシップはポジションじゃない。"
続いて、第二回の授業での、生徒との問答での彼の言葉。
"自分もそうだったが、ビジネススクールに来る若者の多くが大きな「読み違い」をしている。横軸にキャリアの時間軸(年)をとって、縦軸に、その年齢に応じたポジションで必要になる能力の構成比(%)を取ったグラフをイメージして欲しい。能力を大きく、「リーダーシップ力」と、「ハードスキル(分析力やら問題解決力やら業界知識やら)」に分けたとき、大学を卒業して20代前半で働き始めたばかりの頃は、もちろん後者のハードスキルが縦軸のほとんどの割合を占める。"
"君たちのほとんどが、それがどれだけ急激に前者のリーダーシップ力に取って替わられるかを理解していない。ビジネススクールを出てあっと言う間に半分以上がリーダーシップ力になり、ほんの数年でほとんど全てがリーダーシップ力のみで、ハードスキルはさほど重要じゃない、という状況になる。具体的に何年という話にはあまり意味はないが、いずれにせよ、君たちが思っているよりも遥かに早く、ハードスキルではなくリーダーシップ力こそが仕事をやっていく上で必要な力になっていくということを覚えておいて欲しい。"
"もちろん、ビジネススクールの授業ではハードスキルを主に教えるからそういう読み違いが生じるのは仕方無い面もあるんだけどね。"
これにはホントになるほどなーと思った。自分が薄っすら感じていたことをバチッと言い切ってくれた。ビジネススクールで勉強してても、「こんな細けえハードスキルは要らんな。むしろもっと本質的な体験に時間を使った方がよっぽどいいな。むしろこんなハードスキルを過信してしまうことの方がリスキーだよね」と感じることも正直な話多々あるのだが、その判断が正しいかどうかは別にしても、少なくともそういう視点を持っておくことは極めて重要だと思う。
また、これからの仕事を選ぶ上でも、リーダーシップを磨ける場、生かせる場、という視点を持つことは大事だなと感じた。特に、自分の場合、就職してから数年、戦略コンサルティングファームでは、徹底して、厳しいDisciplineに基づいてひたすらハードスキルを磨き続けてきたため、これから強くこの辺を意識して仕事をしていくべきだなと、改めて、感じた。
もう一つ、これまたなるほどね!と唸らせられた話が、「会社のサイズや種類によってあなたは経営の仕方、リーダーシップの発揮の仕方を変えますか?」という質問に対して。
"組織の規模が変わっても、リーダーシップの本質は決して変わらない。仮に4、5人のサイズの会社を経営することになったとしても自分はBaxterを経営していたときと全く同じ方法で経営するだろう。つまり、リーダーシップの8つのBricksに基づいたやり方を貫く。人間の本質は同じだから。"
"一方で、プロフェッショナルファーム、少なくともPEに関しては、やはり違う。これはビジネスモデルが違うことから来る必然だ。違う種類の動物だから。強い権限を持った一人の意思決定者がいるという形ではなく、個人商店の集まりであり、共同所有、共同経営のパートナーシップ。リードするというよりもマネジするという言葉がフィットする。"
なるほどね。そうなのね。そうだよねと。あんまり具体的なことを考えても意味が無いかもしれないが、リーダーシップを磨くステップとしては、小さい組織での小さなリーダーシップ経験から始めて積み重ねて行くってのは一つのやり方なのかもな、と思った。僕の尊敬する何人かの経営者の先輩方に口裏を合わせたかのように共通して言われる言葉で、「コンサルティングファームでのマネジメントと『会社』のマネジメントは全く違う。経営者を目指すならやはり『会社』で揉まれる方が(リーダーシップ経験を積んだ方が)いいと思う。特にあなたのように、コンサルティングファームでキャリアを始めて、最終的に経営者を目指す者にとっては尚更。」というものがある。どういうキャリアを歩んでいくべきなんだろう。いろいろ考えさせられる。
とまあ、こんな感じです。
少なくとも自分自身は、これまでの人生で、リーダーシップということに関してここまで腰を据えて、体系的に、じっくりと学んだことが無かったため、この授業を通してまったく新しいスキーマができていくのを感じる。そして、今後の人生に向けて重要で価値のある累積思考を貯めてくれていると思う。
日本的には、この辺の話は「器」だとか、「人間力」といった言葉で、「もわっと」認識されている領域の話なのだろうが、それをこういった形で、もう少しメカニカルに定義していくアプローチは、どっちが正しいかという議論は抜きにして、それはそれで意味はあるなと感じた。
また追って時間のあるときにでも、他にどんな話を聞いているのか、報告させて頂きます。
IM Class of 09