さて、今回は4月2日に行われたKellogg Private Equity Conferenceに参加してきましたので、その内容をレポートします。
今回でPrivate Equity Conferenceも9回目を重ねます。Kellogg卒業生の就職先として人気があるバイアウトファンド、ベンチャーキャピタル(VC)ですが、同時に非常に狭き門でもあります。KKR、Bain Capital、Caryle等の大手バイアウトファンドやベンチャーキャピタルのパートナーやマネージングディレクタークラスにKellogg卒業生も近年進出してきており、このカンファレンスではPE業界で活躍する卒業生の話を生で聞ける貴重な機会となっています。
今回のKeynote speakersは以下記載の通りで、DFJ、KKRといった大手ファンドのスピーカーも気になったものの、個人的に一番関心があったのは、80年代 KKRが仕掛けたRJRナビスコ案件をしのぎ米国における過去最大級のLBO案件(transaction valueでなんと33bil米ドル!!)になったHostpital Corporation of America (HCA)のCEOのスピーチです。超ビッグディールの背景でファンド連合軍とどんな駆け引きがあったのかが気になったので要チェック。あと個人的に興味のある投資分野として、最近業界の重要人物の転身が目立つCleantech Investingのパネルセッションにターゲットを絞って参加してみました。
-Raj Atluru, Managing Director of Draper Fisher Jurvetson
-Jack O. Bovender, Jr., Chairman and CEO of HCA, Inc.
-John Pfeffer ('91), Partner at Kohlberg, Kravis & Roberts
* Panel Sessions:
-The Convergence of Hedge Funds and Private Equity
-Private Equity Risks in Healthcare Investing
-Real Assets: Infrastructure Investing
-Influence the Future: Web 2.0
-VC's See Green: Cleantech Investing
-Venture Capital in Emerging Markets
1. Jack O. Bovender, Jr., Chairman and CEO of HCA, Inc.のスピーチ
米国は立派な先進国なはずなのに遅れているのが医療業界。医療技術はどんどん進歩してる一方で、医療を提供する側のサービスは非効率の塊、医療保険は破綻寸前、構造不況業種の代表的な存在です。アメリカで医療サービスを受けたことが無いのでいまいち実感がわかないのですが、同級生と話してて、国民が全員加入している日本の医療保険の話をすると皆かなり驚くので、多分事実なんでしょうね。
HCAは全米最大の病院チェーンで、Bovender氏は35年に渡るヘルスケア業界の重鎮。1994年に一度は引退していたものの、業績が伸び悩むHCAの再生請負人として1997年に再登板後、2002年にHCAのCEOに就任。順調に業績は伸びていたものの、株価は伸び悩んでいたことから、一旦非上場化し、ビジネスの建て直しを図ろうとしたのですが、時価総額が桁外れに大きく、LBOは無理と一度あきらめかけたそうです。
Bovender氏は過去LBO案件を取り仕切った経験があり、そのときのコネクションでKKRのパートナーに相談がてら久々に連絡を取ったら、 "you can do it."の一言で、あっという間にクラブディール(複数のプライベートエクイティファンドがコンソーシアムを組んで買収を仕掛けること)をすることが決まったとか。このスピード感こそ、アメリカの資本主義の極みです。
なかなか勉強になったテクニカルなディールストラクチャーに関する説明はここでは省きますが、一番興味深かったのは、"PEファンドと協働することの是非"について私のセクションメイトで卒業後はPEファンドに行くことになっているJから質問された時の、Bovender氏の回答でした。
"確かに人の命を預かる病院業界において、PEファンドをパートナーにすることが賛否があることは事実。PEファンドはある一定の期間後にエグジットしていく投資家だけれども、その期間において彼らはバリューを提供しようと全力を尽くしてくれる。そこで生み出されたバリューにより、従業員も、そしてそのサービスを受ける患者さんも利益を享受できるなら、こんなに素晴らしいパートナーは他にはいないと考えている。"
ファンドというと何かと目の敵にされる日本ですが、このBovender氏のように「株主価値の最大化=社会への貢献」という資本主義性善説を持つ経営者がより多く出てくると、PEファンドの日本社会における活躍機会もより増えてくるのかもしれません。
もちろん本案件は、米国景気がまだ絶好調と呼ばれていた時期だからこそ出来たビッグディール。サブプライムの嵐が吹き荒れ不況突入真っ最中の現在では12bil米ドルなんていう巨額な負債は調達できない模様です。
昨年はBlackstone等PEファンドのマネージメント会社の上場が相次ぎましたが、ファンドマネージャー達は現在の市場破綻を既に予測していて、だからこそこんなディールが出来たのかもしれないですね。
2. Cleantech Investingのパネルセッション
原油価格の高騰で代替エネルギーへの転換が望まれるエネルギー業界ですが、最近のVC業界のホットな投資対象としてCleantechと呼ばれる分野があげられます。Cleantechは、風力、太陽光、地熱、蓄熱といった代替エネルギーを作り出し貯蔵するインフラから、バイオエタノールといった代替エネルギー原料に至るまで、環境に関連する幅広い産業分野を指します。
代替エネルギーの代表的な存在である風力や太陽光ですが、爆発的な普及には発電コストの改善が求められており、VCが投資対象としているのは発電コストを劇的に下げる技術を開発する企業群とのことで、今後技術競争が激化していくことが予想されています。
VC業界では、Cleantechのブーム一時期のITバブルを髣髴とさせることから、慎重論も根強いようですが、パネリストの一人曰く「ITバブルの時は売上も立って無い企業がとんでもない企業価値で取引されていたけど、Cleantechは売上を上げつつある企業がほとんど。先日開催された Cleantechカンファレンスに参加した約100社のうち、売上が無い企業はたったの2社だけだった。」とのことで、米国市場では地に足の着いた Cleantech系ベンチャー企業が育ちつつあることが窺えました。
パネルディスカッションで印象深かったのは、現在のCleantech市場における2つの懸念点、(1)州・政府による環境税制補助の打ち切りのタイミング、(2)Exit先の出現、です。(1)については、現在のところカリフォルニア州などいくつかの州でCleantech企業に対し税制面での優遇がある模様ですが、いつまで州・政府にサポートしてもらえるかまだ不透明のようです。州・政府のサポートがあるうちに産業としていち早くtake offできるかどうかがVC投資家の大きな命運を握っています。また(2)については、VCの投資先は現在Sarbanes-Oxley法(通称SOX法)等により上場コストが高くなっていることから、IT業界を中心にM&AによるExitが増えつつあるものの、Cleantech業界ではM&Aによるexitがほぼ皆無で、 IPO出来るだけの規模まで成長余力のある企業でないと投資に対するリターンが見合わないようです。M&Aによるexit先が出てこないと市場の爆発的な広がりが期待できないとのことで、この先4-5年で市場環境の激変が求められています。
--
以上、Kelloggに関するというより、ほとんどカンファレンスの個人感想文になってしまいましたが、「こんな話がいつも身近に聞けるKelloggって素晴らしい!」ということで半ば強引に(笑)締めくくらせていただきます。
ここまで読んでくださった方、長文にお付き合い頂き有難うございました。
コメントする