GIM Emerging China (3) - 中国経済について考える

最後に、中国経済の重要性について、限られたスペースの中で限定的ではあるが私見を述べてみたい。(あくまで私個人の意見であり、ケロッグの教育内容とは何ら関係がない。)とはいっても、留学前は中国について特段の知識はなく、GIMに参加しただけで基本以上のことを書けるわけではないので、多少懐疑的な目で読んでいただいて結構である。それでもこのことを書きたいのは、日中関係に摩擦が生じている一方で、これからの日本人にとって、中国は米国と並ぶ最重要な経済パートナーとなることは事実だと思うし、日中間の摩擦が激しく報道される中で、建設的、友好的な関係を築こうという姿勢を忘れないでもらいたいからである。  

China 505.JPG.jpg

 

中国におけるビジネスチャンスの規模

詳細は省略するが、中国経済の発展のポテンシャルの大きさを紹介するために一つの「楽観論」を紹介したい。ゴールドマンサックスが発表して世界中で大きな注目を浴びた「Dreaming with BRICs: The Path to 2050(2003年10月)」というレポートがある。(ウェブ上で公開されている。)これによると、中国経済は2015年に日本を追い越し、2040年に米国経済を抜き去り、2050年にはGDPが約45兆米ドルに達する(2050年の日本のGDP予想は11~14兆米ドル程度)。こうなってくると、飽和した日本市場をいかに斬新なビジネスアイデアで開拓したということを語るよりも、優れた中国戦略を持ちそれを実行する体制を築くことがより重要となってくる。
 
3a 上海の豫園にて.jpg最終消費地としての中国

以前、大手電機メーカーに勤めるある友人から、中国よりもよほどインドの方が革新的な社会で競争力があり、発展の可能性があると言われたことがある。中国製品の質の悪さが報道されることも少なくない。次第に中国経済が豊かになってゆけば賃金と地価レベルが上がり、中国よりも安い労働力を提供する周辺国に生産拠点が移って行き得るから、革新性なしに生産拠点としての競争力を維持することはできない。

確かに、World Economy ForumのGlobal Competitiveness Index (2007-2008、ウェブ上で公開されている。) をみると、中国はMarket Size 2位、Macroeconomic Stability 7位という高評価を得ている一方で、Innovation 38位、Business Sophistication 57位とされている。(インドは順に3位、108位、28位、26位。)知的財産権の保護も弱い。日欧米の技術をコピーして最低のコストで商品を提供することができても、独自の新しい技術や商品を世界に生み出せないのであれば成長は限られるという考えは、革新的な科学技術をベースに輸出主導型の成長を遂げてきた日本人の感覚に合いやすいかもしれない。

しかし、中国は生産拠点としてだけではなく、米国に次ぐ巨大な消費市場として注目されている。背景にあるのは、サプライチェーンにおける近年の革新が「Bottle of the pyrammid (BOP)」と呼ばれる発展途上国の中間・底辺層に対するビジネスを魅力的にしていることだ。BOPに対する個々の製品は低価格でマージンも限られるが、それを購買する人の数が膨大であるため、サプライチェーンの問題が解決できれば、トータルの市場規模(とその成長)は非常に魅力的だ。

実際の数字を見るとわかり易い。2007年には携帯電話の数は米国の2倍を超え、ネットユーザーも米国に並んだ。広大な国土の中で人口が密集する大都市への展開に絞ったとしても、中国には100万人以上が住む都市が200都市以上(米国は9、インドは30)ある。そして、大都市間を繋ぐインフラストラクチャーが強権的な政府の下、ある意味スムーズ且つ急ピッチに進んでいるように見える。中国政府の国内企業に対する保護目的の規制はあったものの、巨大な市場の潜在成長力をにらみ、世界中のトップ企業が技術を持ち込み、新しい市場を開拓し、実績として大きな投資を継続的に行っている(2006年のFDIは 695億米ドル)。
DSC_0565.JPG.jpg中国経済の課題

一方、私は決して中国経済に楽観的な方ではない。ネガティブな点に注目すれば、中国が一段の発展を遂げる上での条件を揃えていないという悲観的な議論をすることは容易である。統治体制の問題は常に大きく取り上げられてきた。厳格な情報統制は最適な資源分配を妨げる。中国は法治国家への発展はまだまだ途上であるし、三権分立の概念は生まれないかもしれない。(共産党政府の下に国会と裁判所があるようなもの。)人々の契約観念も弱い。共産主義思想の下、未だに不動産の所有権の概念があいまいである(期限付きの不動産の使用権が認められるのみで期限が過ぎたところで何が起きるかは誰もわからない)。環境汚染は既に深刻な状況であり、生産の仕組みを変えてゆく必要がある。社会保障制度は未整備である。楽観論者が言うことは、極論をすれば、中国の膨大な人口の下に巨大な経済成長があると言っているだけにも聞こえ、単純すぎる議論が行われるきらいがあるように思う。

ただ、楽観論者が言うところは、中国では様々な課題を抱える中で世界最先端の企業が生まれるのではなく、より普通の経済発展が巨大な規模で起こるということのインパクトの大きさを重要視しているようだ。確かに中国ほど長期間にわたり、高度な成長を安定的に遂げてきた国は他にはない。どこかでダウンターンがあるにせよ、中国が今後の世界経済の発展の牽引役を果たすことは間違えないだろう。ただし、どこかで楽観論に対する警戒心を持ち合わせることは重要だと思う。

注目すべきなのは金融市場改革である。共産主義国家として、国が企業の株主であり、国が銀行を経営し企業に融資を行ってきた(そして膨大な不良債権を生んできた)経済から、自由な株式市場と営利民間企業として銀行が資源を分配するシステムへ転換することは、中国が一段の発展を遂げる上で避けては通れない道であり、それは今日の課題のように思える。市場価格に関する情報や企業業績の開示、それに対するアナリストのコメントなど透明なルールの下、タイムリー且つ広くオープンに行われなければ金融市場は機能しない。それには法や会計制度の整備に加え、情報の自由化も伴う。共産主義概念の整理も迫られるかもしれない。

DSC_0117.JPG.jpg最後に

中国経済には大きな問題があるように思える。また、日本人であれば、文化や経済レベルの違いや不幸な歴史の前に目を背けたくなる気持ちも生じてしまいがちである。しかし、中国について客観的に考えてみることは不可欠である。ケロッグの先代の学校長であるDean Jacobsは、「これからはしっかりとした中国戦略のない企業は生き残れない。」と力強く断言する。中国の抱える様々な問題に対する解決策を提供する友好的なパートナーとして、外国人である我々は中国市場を育ててゆく姿勢が望まれる。

この時代にビジネススクールで勉強をするのであれば、中国やインド等の新興国についてある程度考えてみていただきたい。ケロッグではGIMでの地域研究以外にも、International  Businessが一つの専門体系として揃っており、いくつか授業を取ることはとても有意義だろう。学生間の評点がとても高いコースとして、Jones教授のInternational Business Strategy in Non-Market Environments、Corse教授のGlobal Marketing、Rebelo教授のInternational Finance、Callander 教授のStrategic Management in Non-Market Environments、Brett教授のCross-cultural Negotiationをお奨めしたい。交換留学の道も広いので、考えてみてもよいだろう。    

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このページは、Kellogg在校生が2008年4月 1日 23:21に書いたブログ記事です。

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