09の松山達です。今回は、入学直前の1週間に行われるケロッグの名物イベントの一つ、『KWEST(クウェストと発音)』について書かせて頂こうと思う。

KWESTとは?
正式名称は、Kellogg Worldwide Experiences and Service Trips。
入学前の1年生が参加する旅行イベントで、2年生4、5人程度のリーダー+1年生15から20人程度のメンバーでグループとなり、世界中のいろんな国の中から一つを選び、一週間の旅行に行くというもの。
遊びやらハードな体験やら飲み会やらを通じ、Kelloggカルチャーの源流であるチームワークを身を持って体験し、Kelloggコミュニティの雰囲気に慣れ、これから一緒に2年間を過ごす仲間と友情を深め、ついでに2年生から学校の過ごし方等についてのアドバイスを受けるというもの。さらに、何らかの形でのボランティア活動を通じ、社会貢献も行うことになっている。そしてもちろん、そのプロセスを思いっきり楽しみつつ一生の思い出を作るというのも大事な目的。
これから始まる2年間に向けての『慣らし運転(その一)』と言った所か。(ちなみに、さらに輪を掛けて濃くて楽しい『その二』である「CIM(シム)ウィーク」については別の機会にこのブログでお伝えできればと思っている。)
また、学生主導で、過去のMBAの歴史には存在しなかった、斬新で工夫に富んだ様々なコンセプトのプログラムやイベントをどんどん創出していく/進化させていくというケロッグの良き伝統の端的な例でもある。その昔、当時の学生の提案で細々と始まったプログラムらしく、年を追うごとに規模が拡大し、今や、任意参加ながら600人の1年生のうち8割が参加するほどまでに成長した。学生の満足度も高く、その後の学校生活へのポジティブな影響も大きいことから評判になり、今ではいくつかのビジネススクールが同様のプログラムを導入し始めていると聞く。
参考までに、学校のHPにあるKWEST紹介ページ
http://www.kellogg.northwestern.edu/admissions/studentlife/kwest.htm
どういう旅行があるのか?
旅先には約30の選択肢がある。新入生たちは事前にイントラサイトで各旅行の情報を見て、自分の行きたいトリップを選択するという仕組み。具体的な行き先としては、文字通り『世界中』。主に中南米が最も多いが、(年によって多少異なるが)中国やアフリカ、中東、ヨーロッパも含まれる。もちろん米国内のツアーもいくつかある。
(ざっと思い出せるだけ列挙すると、中国、ドゥバイ、モロッコ、アイスランド、ドイツ、ウィスコンシン、エクアドル、ジャマイカ、プエルトリコ、コスタリカ、メキシコ、ペルー、チリ、アルゼンチン、ブラジルと言ったところ)
また、それぞれの行き先別にリーダーチームが考える独自のコンセプトと活動内容が掲げられる。ビーチやプールサイドでまったり飲みつつ、夜はパーティーで踊り狂うというゆっるーいものもあれば、毎日ひたすら山登りというハードなものもある。中にはニューオリンズで徹底して復興支援のボランティア活動に従事するというものまであり、その活動内容にもかなりの幅がある。奥さん/旦那さん同伴で優雅に芸術を楽しむツアーや、子供たちも楽しめるほのぼのツアーもあるので、ご家族でいらっしゃる方もご安心を。

仲良くなるたに施されたユニークな仕掛け
KWEST全体に共通ルールとして課された、非常に面白いトリックがある。『一週間の旅行の間、決して名前以外の自分のバックグラウンドを明かしてはならない』というもの。年齢や出身国/州はもちろん、どんな家庭の出身なのか、何大学で何を学んでたのか、どんな仕事をしていたのかも喋ってはいけない。そして、一週間を共に過ごした最後の夜に、皆で正解を予想し合いながら一人ひとり「実は...」ってな具合で告白していくというもの。
これは結構面白い。どうしてもビジネススクールに入った最初は、お互い話題に困った際に、当たり障りの無い「どこの会社でどんな仕事してたの?」から入りがち。だが、そうすると結局仕事の話に終始してしまったり、「Investment bankerはこういうキャラ」的な不必要なステレオタイプに邪魔され、いまいち、その人の個性を理解するまでに時間が掛かってしまい、大学時代のように素の人間同士として仲良くなりにくい面もある。この制約を課す事で、自然と趣味やプライベートに話が及び、強制的にお互いを一人の生身の人間として見ざるを得ず、自ずと距離感を縮めてくれる。(このルールは、子供騙しに聞こえるが、短期的にdiversityに富んだメンバーを組み合わせて強い組織を作り上げる上では非常に効果的なやり方だと思う。自分が将来組織を率いることになったら是非ともトライアル導入してみようと思った。)
一方で、話のネタに困るため、どうしてもアメリカのテレビ番組や、プロスポーツ/大学スポーツなどに話が及ぶことも多く、僕のようなドメドメ海外初体験な日本人には結構辛いんじゃね?ということも想定されたのだが。
そんな中、ノルウェーを選択することに
どの旅行も各様に魅力的だったため、相当頭を悩ませたのだが、いろいろ考えた挙句、ちょっとマニアックながら、ノルウェーを選択することにした。
え?ノルウェー?なんでまた。
一つには、ヨーロッパには行ったことが無かったので、単純に行ってみたかったということ。(中南米は留学中に行こうと思えば自分でサクッと行けるので。)
加えて、紹介文を見たところ、登山中心で突出して活動内容がしんどそうだったこと。旅行紹介のサイトに記載されていた事前評価のスコアリングで、Activity levelが Hard +だった4つの旅行の一つ。(ちなみに他の3つはアイスランド、マチュピチュ、チチカカ湖)
いえいえ、ワタクシ別にハードMじゃないですよ。。。過去に参加した先輩の話も踏まえつつ想像するに、ハードな旅行の方が言葉の壁も問題になりにくく、お互いに助け合うことで、より深く仲良くなれると踏んだため("同じ釜の飯を食った戦友"感)。自分の英語力ではプールサイドでピニャコラーダを飲みつつ、スマートに流暢な英語でアメリカ人たちとアメフト談義やワイドショーネタでは盛り上がれないなーという先入観もあり、「体で語りゃあ何とかなる!」というこれまた安直な発想で。まあ、登山経験は無いが、体力に自信が無い訳ではないし、「ま、なんとかなるっしょ!」といつもの根拠無き楽観主義で決断。
と言う訳で、以下、僕自身が参加した、KWESTノルウェーについて、写真を交えつつ紹介させて頂こうと思う。

不安がよぎる出発前
旅行の1ヶ月ほど前に、リーダーの2年生からメールが届いた。「ウェルカムメール」の類かな?と思ってあけて見ると、「ノルウェートリップは冗談抜きでハードコアなので、毎日ジムに通って下半身のウェイトトレーニングと、カーディオ(有酸素系の運動)を30分くらいはやるべし」とのこと。ブッホッ。どんだけ気合入ってんだ。。。一応申し訳程度にジムに通い、エアロバイクだけは漕いでみたりもした。
さらに、登山グッズ一式を揃えるのがこれまた一苦労。本格的なアウトドアショップに行き、店員さんに手伝って貰いつつ登山家グッズ一式を即席で揃えた。どでかいリュックに登山靴。伸縮可能なハイキングポール(杖)2本、登山用のウィンドブレーカー上下やら厚手と薄手のフリース2枚やら、GORETEX仕様の「ゲイター」(戦時中の言葉で言う「げーとる」か。脚絆(きゃはん)ですね。)なる脛及びふくらはぎを覆うアイテムまで一式揃えた。何とか準備完了!旅立ちが待ち遠しくなってきた!
そんなこんなで準備も終わり、いざ出発...
シカゴからスウェーデンへ飛び、飛行機を乗り換え、ノルウェーはオスロへ。空港からバスで約半日掛けて、旅の出発点である山小屋へ到着。ハイジに出てきそうな素敵な山小屋で、これから始まる試練も知らずにのんびりコーヒーで一服。

と言う訳で、次の日からいよいよ本格的に登山が開始。が、いざ始まってみると、ぬおっ!こいつはなんとも、ガチンコ本気のハードコア。
4日間ノルウェーの山道を毎日20キロ近く歩き続けるコースであることが明かされる。チキンハートな僕は初日から顔面蒼白。思いっきり心が折れそうになりましたとさ。
初日の登山。ノルウェーの最高峰、2500メートルの雪山に登頂。途中空気が薄く、高山病で意識が朦朧。そんな中、斜度のある岩場を四つん這いで登り続けたため、完全にグロッキーになりました。(そのヤバイ岩場の写真は、残念ながら、ありません。定義により。写真なんて撮ろうものなら確実にノルウェーの山に住む地縛霊になりそうだったので...)

山の中腹で、幅約1キロの氷河を渡ったのだが、ガイドさん曰く、途中に雪で覆われて見えなくなっているクレバスがあり、奈落の底へ転げ落ちる恐れがあるので、念のため命綱で全員を繋ぐ必要があるとのこと。一瞬本気で戦慄走っちゃいました。とは言え、まあ、言っても、さすがに落ちないでしょと。「まったー、そうやって旅行者を怖がらせちゃってー、大人気ないなーガイドさんも☆」、と軽く流しつつ楽しく歩いていた矢先、僕の前の前を歩いていた女の子が突然視界から消えて愕然。悲鳴の聞こえた足元を見ると、ちょうど胸ぐらいの高さまでズッポリクレバスに嵌っちゃってました。えええええっ!?むぁじでっ!?慌てて皆でロープを引っ張り、一命を取り留めることが出来たものの、命綱が無かったらシャレにならんことになってたと思い、背筋が凍った。
そんなこんなで始まった強行軍、その後も、晴れたり霧が掛かったり雪が降ったりと、もはや虐めでしかない天候の中、毎日歩き続けた。巨大なノルウェーの国立公園の中を、山から山へと山小屋を転々としながら移動。
途中、ガイドさんが「あっ、わりい!2時間前に道違えてた!間逆だわ。ごめんね。てへっ♪」と驚愕のコメントを吐かれ、隙間空きまくりの巨石が積みあがった岩場の上をマリオよろしくジャンプし続けて突破する羽目になったり、湿原を歩き続けて防水登山靴の中までぐちゃぐちゃになったりしながらも、涙も鼻水もだらだら垂れ流しながら、「脚いだいー」、「腹減ったー」、「飯まだー」を連呼しながら何とかで乗り切り続けた。

4日目にはとうとう膝が悲鳴を上げ、涙ながらに戦線離脱することに。登りは大丈夫なんだが、下りのダメージが。岩だらけの急斜面を結構なペースで降り続けたため、蓄積する衝撃で靭帯が痛んだらしい。引き続き登山を続ける皆を尻目に、他数名の脱落メンバーと共にフェリーで湖をショートカットし、最後の目的地へと移動。最後はビールで派手に乾杯し、最終日は一日オスロを観光旅行し、辛くも楽しい旅行は無事幕を閉じた。

...何だかんだ言っても、振り返って見れば、最高の体験でした。
と、辛いと言えば間違いなく辛かったのだが、振り返って見ると、人生の財産とも言える貴重な体験をさせて貰った一週間だった。
●まず、最高の自然、最高の景色
この旅行を通して目にした数々の風景はどれも、頭が朦朧として足も痛い中ながらも、これまでの人生では決して見たことの無い素晴らしいものだった。3日目の午後、最も苦しい時に、何時間も掛け、岩と雪と苔に覆われた急斜面を登りきり、やっと辿り着いた尾根の向こうに広がっていた、湖と、フィヨルドの山々と、空と雲と太陽が織り成していた素晴らしい景色は、絶対に一生忘れられないと確信できるくらい深い感動を伴って記憶に刻まれた。皆、疲れも痛みも空腹も全て忘れ、思わずその場に無言でしばらく立ち尽くしてしまうほどだった。
その他にも、「つかこの景色明らかに中学の地理の教科書で、フィヨルド地形を紹介するページに載ってたなー」という雄大な大自然の景色に数多く遭遇した。2日目の夕方には無数のreindeer(トナカイ)の群れにも遭遇した。(もっともこれには、皆で「かわいいねー、きれいだねー、やっぱり野生動物は美しいねー」と感動していたところ、ガイドのおじちゃんが、「ああ、てかあれ業者が放牧で飼ってる食肉用のトナカイだから」とシュールすぎるコメントを発し、しかもその日の夕食で出たトナカイ肉のシチューを皆でオイシイオイシイ言いながら食べちゃってたという何とも切ないオチ付きなのだが。)

●20人のケロッグの仲間たちとがっつり話し、仲良くなれたこと
さすがにこれだけハードコアな旅に参加するような奇特な方々は、自然が好きだったり、歩くのが好きだったり、単純に田舎出身だったり、もしくは度を越して無謀だったりと、基本的に擦れてなくていい奴らが多かった。(ただでさえいい奴ばっかりのKelloggの中でも特にそうなので、どれだけナイスな人々かは推して知るべし。)そして、僕と同じく、ハードな体験を通じて仲間を作りたいという考えの奴らが多かった。
懸案のアメリカ人との話題に関しても、なんだかんだ言って、さすがに向こうも名前と見た目で日本人とわかったらしく、日本の話でいろいろ盛り上がったりもした(厳密に言うとルール違反だが)。アメリカのスポーツも、解らなきゃ訊きゃあいいじゃんということに気付き、「アメリカの大学のアメフトってどうやってナショナルランキングの順位を決めてるの?」的な素朴な質問を投げたところ、「待ってました」とばかりにスポーツマニアどもが食いついてきて熱く語ってくれたりもした。学校が始まる前にアメリカ人も含めて、気軽に言葉を交わせる気心知れた仲間が出来たことは大きい。このメンバーでは今でも時々同窓会をやっている。

●小さな一歩ながらも、ほんの少しだけ、自分の心の限界を超えられたこと
たかだか一週間の旅行で大きなことは決して言えないのだが、この体験は自分の心の殻を少しだけ破ってくれた。正直ここまでハードな道を毎日20キロも歩かされると知らされていれば、躊躇して参加していなかった可能性も高い。道の途中で「これマジ無理」とか「え!?ホントにここからまだ半分あるんですか!?」とか「このまま野垂れ死ぬのもありかも」と何度も思った。が、歩かざるを得なかった(歩かないと飯が食えないので。というか家に帰れないので)。
自分は比較的ストイックに物事に取り組める方だと思うが、今回の旅行では明らかに自分一人でやっていたら妥協していたところ、自分自身ではそこまではプッシュしないだろうと思われるメンタルリミットから一歩どころか十歩くらい先まで、強制的に踏み出させられた。そして、やってみると、意外と何とも無かった。仲間たちとくだらん話をくっちゃべりながら歩けば、苦しさに思考が及ぶ頻度も減り、何となく、「前向きにチャレンジを楽しもうぜ!」というPositive Mental Attitudeの教科書に載ってそうな心理モードにも入れた。
ほどよいセーフティーネットに守られた環境の中で、ちょこっとだけリスクを取って、心理的限界を突破するという疑似体験を積めた。大袈裟に聴こえるかもしれないが、これから2年間、そういう行為を繰り返しをしていかなくては行けない中では、小さいながらも非常に意味のある最初の一歩を踏み出せた気がする。

●Kelloggの哲学についての理解
こういった形で、大掛かりな行事/仕組みで、プロセスを思いっきり楽しみながら、チームで協力しながらチャレンジングな何かを成し遂げていこうというスタイル。その過程でお互いから学ぶという考え方。また、それら全てを学生が自らの意思で自律的に運営していくアプローチ。これこそKelloggのカルチャーだと思った。
これまでのパラダイムとは違う、教科書に載っている伝統的なリーダー像からは少し進化した、新しい時代に活躍できるリーダー、大小さまざまで多様性に満ちた組織に溶け込み、ポジティブな影響を与え、変化を起こせるバランス感覚に優れたリーダー、そういうリーダーたちを育てるKelloggの、人間力重視のリーダーシップ教育の哲学が上手く表現された一つの例だと思った。(個人的には、殊日本の組織に於けるリーダーシップとの親和性は極めて高いと思っている。)

オマケ
最後に、最終日前夜に行われた、例の素性暴露大会がどうなったかだけ簡単にレポートさせて頂こうと思う。
まず面白かったのが道中の「探り合い」。アメリカ人の間で、「お前の訛りは南の方だな」とか、「そんなにミシガン湖のこと知ってるのは怪しい。お前絶対ミシガン大だろ。寒さに強いし」みたいな会話が飛び交った。中には自然な会話の流れの中で、唐突に「ところで、〇〇大学01年卒の××って知ってる?」とカマを掛ける奴まで。ちなみに僕に関しては、見た目と名前が日本人→しかも日本の大企業のことよく知ってる→自動車好き→日本の自動車会社出身、と決め付けられていた。。。(いやいや、読み浅すぎだから。)
いざ、蓋を開けてみると、結構面白くて個性的なキャラだなと思っていた奴が、何のことは無い、戦略コンサルやら投資銀行など、MBAではめちゃくちゃありふれた普通のバックグラウンドだったり、逆に、カタギな感じかもね、と思っていたら、プロピアニストだったり元ダンサーだったりと、結構予想と違っていて面白かった。他にも、弁護士、エンジニア、空軍のパイロット、小学校の先生、柔道の元ジュニア米国チャンピオンなど、かなり個性的で多様なバックグラウンドのメンバーであったことが判明。この辺の素性を最初から聴いてたらここまで盛り上がらなかっただろうなーと思った次第。
以上、KWESTの紹介(ノルウェー編)でした。
松山達 Class of 09
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