09(現一年生)の松山です。今回は授業のことをレポートさせて頂こうと思います。(学生自治会の取り決めであるルール上、授業のスペシフィックな内容をウェブ上に記載することはできず、そこからの自分なりの感想という形になります。ご了承戴けると幸いに存じます。)
1.どういう先生か?
冬学期の授業選択では、大量の持ち点を投入し、ある看板教授の授業を競り落としに行った。マーケティングのJulie Hennessy教授。07年のケロッグ教授MVP。
自身が82年にケロッグを卒業したのち、General Mills社に4年、食品メーカーのクラフト社に約10年勤め、プロダクトマネージャーとして輝かしい業績を残した後、鳴り物入りでケロッグの先生に転身。その後、その高い実力から破格のスピードで出世し、あっという間にベスト教授に登り詰めたという経歴の持ち主。アメリカ人も日本人も、その他のインターナショナルも、彼女の授業を受けた先輩や同級生の文字通り全員が、口を揃えて「素晴らしい。絶対に取るべき」と薦めていた。
参考までに、Kelloggサイトのパブリック向けのページのリンクhttp://www20.kellogg.northwestern.edu/facdir/facpage.asp?sid=851
2.ところが、本音では、低めの期待値設定で臨んでみた...
が、正直な話を打ち明けてしまうと、そこまでして選択しておきながら、敢えて意識的に期待値を低めに設定していた。というよりも、「ホントにすごいの?」、「なんぼのもんじゃい」と、天邪鬼で疑い深い自分は、偉そうにも懐疑モードでいた。それにはいくつかの理由があった。
●一つには、初歩の初歩である、コア科目のマーケティングだったこと。
程度の差こそあれ、恐らくどこのビジネススクールも同様だと思うが、最初の2学期にコア科目で基礎の基礎を一通りカバーする。軍人、スポーツ選手、芸能人、医者、政治家といった、ノンビジネスバックグラウンドの学生も多い中、その後の選択科目でより多様且つ実践的で深い内容を学ぶ上での土台を作り、スタートラインを横一線に揃える目的もあるため、どうしても、所謂「教科書的な」スコープになっている。つまり、これから新しい言語を学ぶに当たってのアルファベットを学ぶ、実践的な数学を学ぶために四則計算を学ぶ、ゴルフコースを回り始める前に、ひたすら打ちっぱなしでフォーム作りをする、みたいな部分が大きい。従って、どうしても、後の選択科目に比べると、実践よりは理論寄りで、ワクワクする発展演習編というよりは、基礎を地道に学ぶという傾向が相対的に強い。なので、まあ、あんまり楽しくないかもね、と高を括っていた。
●二つ目には、自分自身のバックグラウンドの問題。MBAで学ぶ内容にダイレクトに近いプロフェッショナルファーム系のバックグラウンドの職業の人たちは、どうしてもその専門分野の基礎科目をつまらなく感じてしまう傾向がある。例えば、元会計士の人はアカウンティング、元投資銀行の人は、ファイナンスの基礎、戦略コンサル出身者はマーケとストラテジーに対してそう感じるケースが多い。(もちろん、Waiveという免除制度により飛び級が出来るのだが、自分は敢えて基礎をみっちり学びたかったので、敢えてそういう選択をしなかった。)そういう自分も、戦略コンサルティングの仕事を6年以上経験してきていたため、マーケとストラテジーに対しては(偉そうにも)、ホントに面白いのかね?/使えるのかね?と、(なんとも失礼な話)正直ちょっと「嘗めていた」部分もあった。
●もう一つは、実は夏休みのケロッグのサマースクールにて、一度Hennessy先生の授業を1時間だけ受けており、その時の印象がさほどインプレッシブではなかったこともある。非常にシンプルなケースで、1時間一本勝負のみで、ケーススタディーの議論の仕方そのものを学ぶ(しかも英語が苦手なインターナショナルのみが対象なので、「英語を使って」という部分も学びのスコープ)、というものだったため、実際の授業とは全く違うし、そんな中でインプレッシブで学びの多い授業をやるなんて至難の業なのだが、相当期待して臨んだだけに、暖簾に腕押し感が強く、「ふーん、こんなもんなんだ。。。」と拍子抜けしてしまった過去があった。(これは今から考えると自分の勝手な期待値設定ミス。)
そんな中、「ホントにすごいんかね?ま、あんまし期待しないけどね。。。」という低めのテンションで初回の授業を迎えたのだった。(ホントに何様だって話なのだが。)
3....ところがどっこい、受けてみてビックリ
結論から言うと、物凄く、良かった。嬉しい方向に力いっぱい自分の期待を裏切ってくれた。完封負け。降参。土下座して「ま、参りました。偉そうなこと言ってスミマセンでした」と謝りたい気持ち。ここまでのところ、大変エキサイティングで、得るものも多く、授業に出るのが非常に楽しみな授業になっている。朝8時半からの授業で寒い道を朝早くから歩いて学校に行くのは出不精な自分としては心が折れそうになるのだが、そんなの全く気にならない。ハートをガッチリ鷲掴みにされ、ここまで2学期間で受けた授業の中では文句無く最高の授業になっている。
4.じゃあ、彼女の授業の具体的に何がいいのか?
ここから先は正直人によって、その人のバックグラウンドや価値観、性格、そして何よりも感受性/学びのレセプターの着き方によって大きく意見が分かれるところなのだが、あくまで僕個人の感想という大前提の下、何をいいと感じているのかを述べさせて頂こうと思う。(いろんなレベル感でいろんな良さがあるのだが、あまり整理にこだわらずに)
●すごく初歩的な話、単純に『おもろい』
「知的に興味が持てて/刺激的で面白い」のはもちろんなのだが、それに加えて、敢えてそれと区別するために、「おもろい」と書かせて頂いている。要は、エンターテインメントとして、極端な話「お笑い番組」として、十分にお金が取れるレベルで「おもろい」。interestingじゃなくて、funnyとかhilariousの方。授業中に結構な頻度で爆笑含め、笑ってしまう。 Hennessy先生のトークが物凄く「ウケる」。彼女自身が相当な数の「滑らない話」の引き出しを持っている。その話し方も巧い巧い。身振り手振りを交えておどけてみたり、声のトーン/裏返りも含めて、ベテラン吉本芸人並み。また、生徒に話掛けて、話を引き出して、彼/彼女を不快な気持ちにさせることなく、「いじる」ことによって笑いを取る。島田伸介の素人イジリ、ロンブー淳の女性タレントイジリ並みの職人技の域に入っている。
文章だと全然伝わらないのだが、それを承知で敢えて例を挙げると、消費者の意思決定の不条理さの議論になった際に、「例えば結婚の意思決定をする時って迷うでしょ?」という話の流れで、たまたま教室に奥さんを連れてきていたMに、「ああ、あなたのことじゃなくて、あなたの友達の話って前提で、結婚の直前ってどういう迷いが頭をよぎった?...って友達は言ってた?」と訊く。Mは横の奥さんの鋭い視線に怯えながら、「ええっと、、、これは僕の話じゃなくて、あくまで僕の友達が言ってた話なんすけど、、、」と前置きし、奥さんが彼の肩に手を置いた瞬間「あ、いや!彼は何も不満は無かったって言ってました!」で、クラス中大爆笑。うーん、あんまし伝わらないですよね。ごめんなさい。要は、そんな感じの笑いの渦が1回のクラスで何度も起こる。
いやいや、「授業は漫才じゃない」と侮る無かれ。僕自身も受けてみて気づいたのだが、この「笑い」の要素が学びを最大化する上でも極めて大きいファクターだと思った。90分の授業でも決して飽きない、集中力が切れない。個々の話が強い感情と印象を伴って深いレベルで記憶に残る。議論もよりやわらかく、活発になる。逆に、この要素に欠ける授業は、どんなに知的に興味が持てるものでも、どうしても途中でアクビが出てしまう。この気づき自体、彼女の授業を受けたことによる大事な学びの一つ。
●そして、何と言っても、教えるのがムチャクチャ巧い
結局彼女の何が一番凄いかというと、教える能力/技術の高さ。一言で言うと、『教えることの職人』または『物事を教えるという道における超一流のプロフェッショナル』。自分が今まで経験してきたどの先生よりも、(日本の先生、Kelloggの他の先生、他トップスクールの何人かの先生方よりも、)圧倒的に教えるのが上手い。
〇超情熱的。高いエネルギー値。参加しているこっちもエネルギーを貰ってテンションが上がってしまう。
〇話も知的に面白くてハイペースで飽きさせない。
〇事例の引き出しが無尽蔵
〇ハイレベルにインタラクティブ。かなり高い頻度で「大丈夫?」「意味解る?」「皆これに関してハッピー?」と、教室の隅の生徒にまでアイコンタクトを取りながらコミュニケーションを取る。「暖かい」cold callで、英語の苦手なインターナショナル(僕など)に個別に話しかけ、全員を授業に引き込む
〇議論のファシリテーション。押して引いて、落として上げて、整理して。気付きや驚き、腹落ちを鮮明に作り出すのが上手い
などなど
●徹底した、数字とファクトとロジックへのこだわり
最初の授業で彼女が言った印象的な言葉の一つが、「エンジニアや金融出身者の多くが、本音では、『マーケティングなんてfluffy bullshit(フワフワした捉え所のないくだらんもん)だ』と思ってるよね。でもそれは、マーケティングの定義を限定的に捉え、本来の目的を見失っているからだ。自分の考えるマーケティングはそうじゃない」という話。その時は「ふーん」と流したが、実際に彼女の授業を受け、宿題をやる中で、「なるほどね」と腹落ちしてきた。
とことん数字、ファクト、そしてロジック。コンサルティングの三種の神器。ケース課題をやっていても(ちなみに後述するが、彼女はほとんどの場合、自分やKelloggが作ったオリジナルケースを使っている)、結構深いレベルで筋のいい(競争戦略の肝となる)数字が埋め込まれている。結構しっかりマーケットの数字を試算したり、エコノミックシミュレーションをしないと、ロジカルに正しい戦略が導き出せないように仕組まれている。レポートでも、必ずQuantitativeに固い目標設定/分析を入れることを求められる。結構細かいところまで降りて、ファクトを拾い、インプリケーションを考えなくてはいけないように作られている。そして、それらを元にSolidにロジカルに考えないと筋のいい答えが導き出せないように仕組まれている。「なんとなくこうじゃね?」「えいや!」でやると見事に落とし穴に嵌るように作られている。コンサルティング出身の自分がやってもいい練習になるなー!と唸ってしまう。この点は、以前会社の研修で受けていた某トップスクールのマーケティングの看板教授の授業と比べてもそうなので、恐らく彼女ならでは、Kelloggならではの強さなんだと思う。ケロッグのマーケティングの強さの根元には、「なんか社交的で、アイデアマンで、面白いこと言う」という表面的なイメージとは全く別のところに、実はこうした『地に足の着いた』地道な強さがあるんだと思う。
●ひたすら実戦志向
彼女の言葉で印象的だったものの中に、「マーケティングの『コンセプト自体』は、非常にシンプルで誰にでも理解できる。悲しいことに、多くのビジネスパーソンがそこで思考が止まっている。マーケティングという分野の特殊な点は、そこから先のアプリケーション/実戦での適用がものすごく難しいという点。従って、この授業ではとにかくあなたたちが実戦で使えるようになることのみに目的をフォーカスする」というものがある。従って、基本的なコンセプト/フレームワークの紹介の後はひたすらケースで演習を繰り返す。そして、ケースでの理論/枠組みの適用に於いても、極めて実践的。所謂マーケティング科目の範囲を逸脱し、戦略論やファイナンスのコンセプトも含めて思考し、経営者としての意思決定を求められる機会がかなり多い。
また、実用性重視の一つの現われとして、グループワークがある。ご他聞に洩れず、本科目もKelloggの他の授業と同様、バックグラウンドを意図的にバラけさせたグループを組み、そのグループのアウトプットと、グループ内の相互評価により成績の結構な割合が決まる。グループ内の議論がものすごく難しい。ソフトなイシューも含め、全く思考の土俵が違う人たちとの議論。ドロドロの議論になりスタックすることもしばしば。それを越えた先に、鬼のように厳しい評価をするHennessy教授を説得しなくてはいけない。なんてしんどくてストレスフルでtime consumingで(ぶっちゃけ)めんどくさいんだ!と思った矢先、Hennessy先生が、「今ケースライトアップをめんどくさいと思ってる人いるでしょ。でもね。百も承知だと思うけど、実際の組織の中で自分の部署を説得して、他の部署を説得して、最終的にTop managementを説得することの大変さ何てこんなものじゃないでしょ?そのためのトレーニングとして意図的にやっているのよ。」という話をした。「はい!仰る通りで御座います!」と黙らざるを得なかった。
●知識と知恵の双方を行き来しながら強化
これまで自分が戦略コンサルティングのプロジェクトで経験してきた学びのうち、暗黙知だった部分を、形式知化し、言語化するプロセスを助けてくれている(知恵から知識へ)。さらに、いろんな事例をガンガン紹介してくれることにより、その木の幹に、枝葉を増やしてくれている(知識の強化)。さらに、授業中に話を聞いている中で、思考の刺激剤を数多くぶつけてくれるため、自分の頭の中でいろんなイマジネーション/累積思考を生じさせてくれる(知識から知恵へ)。自分の中にある『引き出しの使い方の幅』を広げてくれている気がする。大脳の中のマーケティング系の思考を担う部位のシナプスの網の目がより深く複雑につながっていくのが実感できる(気がする)(知恵の強化)。
●学びの"ROI"が頭抜けて高い
これは正に、受けてみて気付いた、目から鱗な点。ビジネススクールでの学びを、ROI (Return on Investment)で捉えた場合、学びの総量という分子のRの部分もさることながら、実は分母のIの部分、即ち、投下時間、投下労力というファクターも極めて重要、且つ、相当コントローラブルな変数だということ。ここまでの半年を通し、ビジネススクール2年間の限られた時間の中で時間と労力は相当戦略的意思を持って優先順位付け/資源配分をしなくてはいけないという思いを強くしてきた。同じ学びを得るならば可能な限り少ない時間/労力で得られた方がいいに決まっているし、そうすることで他の科目でのリターンや、課外活動やプライベートでのリターンを獲りに行くことができる。つまり、むやみやたらにワークロードが重くて、無駄も含めてゴリゴリと盲目的に勉強すりゃいいって訳では決して無いということ。「なんかものすごく大変な授業で、毎日予習復習やってるけど、結局テイクアウェイって何だっけ?」とか「そもそもこの授業って何の役に立つかわからないけど、取り合えず一生懸命やっとこう」というのは、少なくとも自分のスタイルには全く合わない。極端な話、もしもある科目での学びを、うまくオーガナイズしなおすことで半分や三分の一の時間で得られる方法論があるのであれば、それを探し続けるべきだし、「これは時間を使うべきじゃない」と思った活動や課題は意思を込めて主体的に切り捨てるべきだと思う。
その点、Hennessy先生はそこを非常に良く解った上で、分母のIの部分をかなり意思を込めて絞っている。ケースも自作の詰まりに詰まった分量の少ないものを用いることが多いし、リーディングも相当絞っている。一切生徒に無駄なリソースを割かせない。これは先生としては結構勇気の要ることだと思う。が、彼女はそれをかなりのレベルまでやってくれている。ワークロードは一番少ないのに、テイクアウェイは一番多いというとんでもなく理想的なことが起こっている。一部の他の先生にも見習って欲しいとちょっと思う。。。
他にもいろいろあるんですが、主立った点はこんなとこだろうか。とにかく、いいんです。
5.彼女の何がそうさせているのか?
さて、そう来ると気になる問いとしては、「いいのは解ったけど、なんでそんなにいいの?」、「背後にどんなカラクリが隠れてるの?」、「他の先生じゃなくて何で彼女だけそれが出来るの?」、「それって他の学校じゃなくてケロッグだけに限った話なの?」といった辺り。これまた完全に個人的な仮説の域を出ないが、自分なりに考えたこと。
●実業経験
やはり、彼女自身がプロフェッショナルとして、マネジャーとして現場の第一線で長年戦ってきたという経験が相当大きいと思う。リアリティと説得力が違う。"痒い所に手が届く感"が高い。そして、単純に、素直に信じられる。「そうは言っても現実はさ...」などという疑念がほとんど生まれない。
●マーケティングに対する信念
学期の冒頭での非常に印象に残っているメッセージがある。「マーケティングとは何か?」という漠とした問いに関する議論。多くの学生が「売ること」「顧客のニーズを発見すること」などなどの発言をしていたのだが、先生がバッサリ、「マーケティングは全てだ」と言い切った。何という豪腕。でも、その後の、「マーケティングとは、何もビジネスに限定されたことではない。特定の機能を指している訳ではない。『自分が、相手に対して、こうして欲しいと思うある行動を取って貰うために行う全ての活動』だ。例えば、あなたは日常的に家族に対して、恋人に対してマーケティングしてるってことなんだ。」というコメントを聞いて、なるほどなー、と思った。マーケティングの中に、戦略もファイナンスも組織論も包括的に含まれる、本当は、ここからここまでがマーケティング論という線引きをすること自体ナンセンスというようなことも言っていた。なるほどねと。その考え方はしっくり来る。
●目的意識の正しさと揺らがなさ
これは自分の想像だが、そんな中で、恐らく彼女の中での授業は、正にマーケティングのプロセスに他ならないという捉え方をしてるんじゃないかと思った。つまり、学生は高い授業料を払ってくれているコンシューマーであり、彼らに対して、経営について学び、人間的に幅を広げ、将来的に世の中にポジティブなインパクトを与えていく人材へと成長していく、そういう行動/結果を成し遂げさせたい。その為にこの授業の場/時間をどう使って、何をどうやって伝えるべきかを、既成概念を取り払ってゼロベースで考えましょ、という思考回路になっているんじゃないかと思う。だからこそ、全てが極めて学生目線で作られている。
それを表す端的な例として、就職面接対策の話がある。結構トリッキーな話なのだが、彼女は全20回の授業の中で、2.5回ほどを割き、「就職面接対策」の授業をした。それがユーザー(である学生)の望むことだし、目的の達成に資するから。さらに、その内容もマーケティングの哲学に基づいた極めて実践的で有用なものだった。ユーザーである採用担当のニーズって何なのかを想像し、競合と差別化し、自分をどう伝え、オファーという行動を取って貰うか(結果としてマーケティングの3Cのフレームワークに合致)。さらに、table stakesとなる自分の強さを伝えた上でさらにどう競合と差別化したポジショニングを取るかという、Segmentation Targeting Positioningの考え方、及び、持ちネタと伝えたいメッセージのマトリックスである"ストーリーマトリクス(彼女の造語)"の話など、非常に「即使える」話をしてくれた。間違いなく、学生の就職戦線における戦闘力を一段引き上げてくれたと思う。広い意味でのマーケティングの思考訓練としては非常にいいものだった。
●フィードバックを繰り返し、チューンナップを10年間積み重ねてきた
既にこんなに素晴らしい授業を提供しているにも関わらず、尚、彼女のコミュニケーションの節々から、学生からのフィードバックに対するオープンさと、謙虚さを感じる。また、マテリアルや授業の段取りの節々から、学生からのインプットを受けて改善を重ねた感じが洩れ伝わってくる。恐らく、10年間のキャリアの中で、貪欲に学生からのフィードバックを求め、自らもセルフフィードバックを反復し、地道に細かい改善を重ねていった末に行き着いたスタイルとスキルなのだろう。しかも、それでもなお柔軟に変えていこうとする姿勢を貫いている。これぞ超一流のプロフェッショナル。尊敬の念で心が痺れる。本当に脱帽。見習いたい。というか弟子入りしたい。
●授業へのリソース集中
これは、ケロッグならではの仕組みに担保された強みなのだが、ケロッグが他の学校と明確に違う一つの仕組みとして、教授が『教えること』に100%フォーカスする就業形態が許されているという点がある。世の中一般のビジネススクールでは、教えることと平行して、自分自身の研究をし、学術論文を発表しなくてはいけないケースが多いと思う。が、ケロッグでは、一定の要件を満たせば、敢えて、自分の研究は捨て、教えることに100%リソース割くことが許されるというもの。もちろん、本人のキャリアとしては、学会での知名度など、それなりのダウンサイドはあるのだろうが、学生としては嬉しい。彼女がそれを利用しているのかどうかは知らないが、少なくともそういう仕組みがあるくらい、教えることに対してセンシティブ且つサポーティブな学校であることは間違いなく、少なからず授業のクオリティに影響を及ぼしているのではないか。
●教えることに懸ける情熱
彼女自身、自分自身を教授として差別化させている大きなファクターは、学生一人ひとりとのコミュニケーションと、教えることに懸ける情熱だと言っていた。確かに。物凄い情熱を感じる。学生からの質問に対し、夜中の2時3時まで掛けて、一人ひとりにメールで丁寧な回答をくれる。宿題のフィードバックは紙が真っ赤になるくらい詳しく、愛に溢れた(手厳しい)ものだった。卒業後も多くのケロッグアラムナイが人生相談で彼女の元を訪れると言うが、納得。
そしてまた、こういう言い方もしていた。「自分が最優秀教授賞を貰ったのも、決して他の教授よりもIQが高いからとか、もともと煌びやかな才能があったからとかじゃない。単純に誰よりもこの仕事、教えるということが大好きだったというだけ。どんな仕事でもそう。大好きなことに没頭して、時間を使って、どうやったらもっと良くなるかを考え続ける。短期的な変化は目に見えないかもしれないけど、それを5年、10年続けたら、大きな差になるよね。だから、人気がある仕事とか、収入とか、そんなの全然関係なくて、あなたが心から一番好きな仕事を選びなさい。」もう、この言葉を聴けただけで、この授業を取って良かったと思った。一生忘れたくない言葉、卒業して働き始めて心が折れそうになってもまた思い出したい言葉だ。
●ケロッグ愛
加えて、ケロッグに対する愛を随所に感じる。言葉の節々から滲み出てくる。もちろん、彼女自身ケロッグ出身というのもあるだろう。授業の中でも、『他のビジネススクールには絶対に負けんじゃないよ!』という気合と対抗心が伝わってくる。彼女に限らず、このケロッグのコミュニティに対する愛情というのは恐らくケロッグ独特のものがあると思う。彼女がそうなのかどうかは知らないが、何人かの看板教授たちは、いろんな学校から誘われ、高い金を積まれ続けているケースも多いと聞く。また、中には実際に他の学校に一度行った後に、敢えてサラリーを多少下げてでもケロッグに戻ってくるケースも多いという。そういう教授たちのほとんどが、「自由度が高く、競争と協調の最適バランスを大事にするケロッグのコミュニティ、文化、価値観が好きだから」と口にするとのこと。個人的には、そうやって、金に釣られずに自分の信じる道を貫き、愛するコミュニティに居続けるという意思決定は、最高に潔くて熱いと思うし、大好きだ。
6.最後に、、、
以上、ブログの記事としては異例の超長文記事になってしまったが、Hennessy先生のマーケティングの授業のご紹介でした。冒頭でも申し上げた通り、授業の具体的な内容をお伝え出来ないため、「そこを知りたいんだよ!」という受験生/合格者の方にはちょっと物足りない内容になってしまっている気もする。書いてる僕自身も歯痒い部分もある。が、雰囲気だけでもお伝えできれば、少しでも学校選びの助けになれば幸いです。
ここまで振り返って見て、マーケティングそのものの学びもさることながら、個人的には、この人との出会いそのもの、この人の人柄や仕事っぷりそのものから得る刺激、エネルギー、学びの方が、得た物としてはでかいのかも知れないと思った。
また、ビジネススクールって、当初の先入観と事実が違うことが結構あり、実際に体験してみないとわからないものも結構あるな、とも感じた。
引き続き、自分独自の感性、スタイルを大切にしつつ、学びのレーダー、感受性のアンテナを可能な限り高く、保っていこうと思う。
しかし、ワタクシ、どうも長文になってしまう傾向があるみたいです。。。伝えたいことがありすぎるからなのですが、明らかに読み手フレンドリーではないので、次回以降もうちょい絞れるようがんばります...すいません。。。
松山達 Class of 09
コメントする